2018年7月14日 (土)

レアアースの未来

   岩国市   会 員   片山清勝

 七月号の巻頭随筆『日本近海にレアアースを発見』を読んで、高校で学んだ資源の話を思い出した。
 昭和三十年代のはじめ、日本の主要エネルギーが石炭から石油に移行をはじめ、国内産業は大きな転換期にあった。当時、教科書での石油埋蔵量は今後三十年分だということだった。ただ、それから六十年が経った現在でも、石油は枯渇していない。ただ、国内でとれる石油の量はほんのわずかであり、多くを海外からの輸入に頼っている状態だ。
 日本の資源の乏しさは、レアアースについてもそうだった。 
 しかし、早稲田大学の高谷雄太郎氏によると、日本近海に膨大な量のレアアースが眠っていることが分かったという。その量は、ハイブリッド自動車のモーターなどに使われているプロシウムとテルビウムであれば、なんと世界需要の七百三十年分。途方もない数字である。
 文章を読むと、採掘に向けての課題はまだ残っているという。それらをクリアし、日本を、中国を凌駕するレアアース輸出国に成長させてほしい。それは、世界の最先端技術発展に貢献することにもなるだろう。
 未来に向けて、非常にわくわくする話を知ることができた。早期の採掘技術完成を願っている。

     (2018.07.10 文藝春秋8月号「三人の卓子」掲載)

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標語に安全運転誓う

   岩国市   会 員   片山清勝

 8日の広場欄「無事願い毎朝見送り」は、お父さんを交通事故で亡くされた主婦が、毎朝主人と子どもの見送りをするのは「ただいま」を聞く楽しみのためだとあった。読んで、前に見たある標語を思い出した。
 川沿いの道を上流ヘ1時間、ある講座の手伝いで2年間通った。カーブの連続するその国道187号は、数字をもじって「いやな国道」とも呼ばれる。
 会場近くになってほっとする辺りに、大きな看板があった。「ただいまが 何よりのお土産」。そんな言葉が大きく記してあった。右力ーブで減速する所なので、はっきり読めた。
  「ただいま」のあいさつ、そのひと言がどんな土産にも勝るという標語。それを聞いて「おかえり」と迎える言葉が安全運転に連なる。
 私も通るたびに「無事に着いた。よし、帰りも安全運転で帰るぞ」とハンドルを握り直した。この地を車で訪れた人にも、安全運転を促す効果があった。あの看板、まだ立っているだろうか。    

        (2018.07.14 中国新聞「広場」掲載)

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2018年7月10日 (火)

9歳の青春

   岩国市   会 員   吉岡賢一

 小学3年生の孫は野球大好き少年。地元のソフトボールチームの一員として練習、試合に頑張っている。大汗をかいた真っ赤な顔が何ともたくましい。
 チームは3月まで、鍛え抜かれたパワーとスピードを持った6年生が4人もいる強豪だった。しかし、4月から6年生は1人だけになった。他は5年生以下の慣れないメンバーで編成している。強豪から一気に弱小へと様変わりしたといっていい。
 それと同時に、2年の初めからセカンドのレギュラーとして使ってもらっている孫はショートを守ることになった。
 ある日の試合で、5年生の先発投手が崩れて大差をつけられた。監督は将来を見据えてか、投手の練習を始めて間もない3年生女子をマウンドに送った。だがストライクが入らない。うつむき加減で涙がこぼれそう。そこヘショートから駆け寄った孫が、小声で何かを話し掛けた。プレー卜周辺の土を足で盛んにならし、最後にポンと肩をたたいてポジションに戻った。
 投手は勇気を得たのか、ピッチングが変わった。ストライクが入りだし、なんとか試合になった。
 結果は大敗だった。しかし、当たり前のようにチームメートを励ます行為には培った友情、心の交流がある。孫本人にはまだ分からないだろう。グラウンドには9歳なりの美しい青春が展開されていた。見る者の心が熱くなった。 
 
勝ち負けではない。精いっぱいの君がいとしい。

     (2018.07.10 中国新聞セレクト「ひといき」掲載)

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2018年6月28日 (木)

消えない花火

      岩国市  会 員   森重 和枝

 20年前になるが、友人から珍しいアジサイをもらった。
 
 挿し芽をしたのが今では大株になって、梅雨の庭を彩る。
 
 隅田の花火という八重咲のガクアジサイで隅田川花火大会が名前の由来らしいが納得だ。
 
 緑の花心に垂れ下がる白い装飾花の咲く枝を、5輪も生けるとリビングに花火が開いたようで楽しくなる。庭の方の花色は青に変わっても、10日以上白いままきれいに咲き続けている。
 
銅貨を入れておくと花持ちがよいと聞く。花瓶が銅製だからか長持ちだ。パッと開いてすぐ消えるのが花火の醍醐味。そろそろ幕引きしてあげようかな。
 
  (2018.06.28 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2018年6月24日 (日)

妄 想

        岩国市  会 員   稲本 康代

 梅雨の晴れ間に裏山を散策していると、草が生い茂った中にササユリが1輪咲いている。じっと見つめていると「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」。思わずこの言葉が出た。細くしなやかな茎につく百合の花が風を受けて揺れるさまは美しい女性が楚々と歩く姿を連想するとネットに書いてある。
 (あ~私には無理、到底、まねできないなぁ)とつぶやきながら、でも一瞬(私は花なら何だろうかな)という思いが頭をよぎった。いやいや、考えるのはよそう。打ち消して庭に出ると、鉢植えのサボテンが笑ったように見えた。
   (2018.06.24 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2018年6月20日 (水)

感性が大事

  山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 はがき随筆大会の帰りに、随友とバスに乗った。途中で3人組のユニークな客に出会う。会話に始まり、することなすこと全てがおかしく笑いながら眺めていた。すると、隣の随友がエッセーが書けそうだねとつぶやいた。そうだ。習ったではないか。この感性が大事なんだ。
 「毎日、のんべんだらりと生きていて、身の回りの出来事や物をただ見ているだけではエッセーは書けません。それらを丁寧に観察し。そこから何かを感じ取る心が必要です」
 感性を磨くことに気づかせてくれた随友に感謝。どんなエッセーを書いたのか楽しみだ。
  (2018.06.20 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2018年6月19日 (火)

自 作

  岩国市  会 員   上田 孝

 いろんなものを自作する先輩に1日弟子入りし紙芝居の舞台を作ることになった。師匠の作品がお手本。道具も拝借していざ開始。とはいえ、切る、削るなどの肝心なところは師匠が。私は板を押さえたりの手伝い気分でいたら、糸鋸は自分でやれという。刃をにらみつけ、肩に力が入りながらも何とか切りきった。結局、丸2日かけて完成。
 早速かみさんがボランティアの会で紙芝居を披露したら、仲間から舞台を絶賛されたらしい。師匠のお陰だが、今後、人に見せる時には「これ、作ったんです」と主語抜きで言おうと思っている。
  (2018.06.1
9 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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母の日を過ぎて

   岩国市   会 員   片山清勝

 私が結婚したのは、父が急逝した年の翌春だった。ほどなくして妻から「母の日の贈り物は何にしましょうか」と相談を受けた。
  「母の日」 「父の日」があることは知っていた。だが、両親への感謝の気持ちを贈り物に変えたことはなかった。「心配を掛けず、真面目に勤めることが何よりの親孝行」。それが信条だった。仕事に対する父の真摯な姿を見ていたために違いなかつた。
 初めての母の日の贈り物が何だったか、記憶していない。その後、妻の考えで毎年贈り物は続いた。
 母は20年余り私たちと同居して、最期は望み通り、妻に手を握られて入院先で亡くなった。
 贈り物のことを思い出したのは、母の三十三回忌を母の日の直前に済ませたからだ。長男の務めの一つを済ませたという以上に、今回は思うところがあった。
 私ら夫婦は、祖父母と父の五十回忌を無事済ませてきた。次は母の五十回忌。その時、私ら夫婦は90代半ばになる。長い時間の向こうにある。行えるかどうか何とも言えない。
 今回の務めが「最後の母の日の贈りもの」になるかもしれないと、少し弱気かもしれないが、そう考えずにはいられなかった。参列した身内も知らない母のことを妻は話していた。
 母の日、京都に住む息子と嫁の連名で花が届いた。息子から妻への初めての母の日の贈り物だった。
 わが家の母の日は、2代続いて長男の結婚から始まった。

    (2018.06.19 中国新聞セレクト「ひといき」掲載)

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2018年6月18日 (月)

いい匂い

  岩国市  会 員   貝 良枝

 「はい、手紙。預かった」と娘は帰宅するなり、メモをくれた。「匂いから、おいしかったです」。私の作ったリンゴのケーキを「これ、絶対おいしいやつじゃないですか。匂いで分かる」と職場の後輩が喜んで食べたそうだ。
 匂いは食べる前から食味を倍増させると思う。1人暮らしの母へ食事を届けるより、そこで作った方が母の楽しみが増すようだ。「何ができよる?」と寝室からニコニコとやって来る。
 匂いからおいしいと喜んでくれたあの子や母、そして娘に今度は何を作ろう。いろいろな匂いが頭の中にたちのぼる。
  (2018.06.18 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2018年6月12日 (火)

のるかな?

    岩国市  会 員   樽本 久美

 母が入居した老人ホームで、川柳を教えることになった。第1回の川柳教室。「作ったことがないから、できんよ」という78歳の男の人に「私が助けてあげるから大丈夫よ」と言うと「それじゃあ、やってみよう」と。1冊のノートを配り「思うことを何でも書いて」と言うと、始めは「難しいな」とか言っていたが、少しずつ手が動いてきた。
 
 そのノートを見て、私が「ここは、こういうことですか?」と聞くと「そうよ」との返事。少しヒントをあげると1時間余りで13句も作ることができた。
 早速、新聞の川柳に応募した。誰が載るかな。
    2018.06.12 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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