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2007年9月

2007年9月25日 (火)

「イチジク賞味」

   岩国市  会 員  稲本 康代

 うるさかったセミの声がやみ、スズムシが鳴く季節に入って、私の大好物イチジクが出始めた。秋の到来を告げるような気がしてうれしい。

 

 「無花果」と書いて「いちじく」と読むが、花が咲かないわけでなく、実の中にある小さなプチプチの粒が花なのである。実と花を一緒に食べるぜいたくなフルーツなのである。

 幼いころ、妹や弟と家周りのイチジクの木に登り、勝手に取り合って食べていた。「女の子が登ってはダメ!」「食べ過ぎると口の周りがかぶれるよ」と母に言われながら……。

 しかし、イチジクの何と高価なことよ。1パック500円近くする。思い切って財布のひもを緩めて買って帰る。一口食べて甘くなかった時の無念さ。お店に文句を言いたい心境になる。

 

 今年は何度食べられるかな。栄養たっぷりの果実を「一期一会」の思いで、じっくり味わうことにしよう。

 (2007.09.25 毎日新聞「みんなの広場」掲載)

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2007年9月21日 (金)

「お月様」

   岩国市  会 員   吉岡 賢一

 男勝りでやる気満々の長女。明日は待ちに待った幼稚園の運動会。何が何でもお天気になってほしい。

 あいにくその夜はお月様が出ていない。お風呂上り「懐中電灯を貸して」と言う。

 手渡すとうれしそうにパンツ一丁で外に出た。植木の茂みから軒下、果ては側溝の奥のほうまで必死に捜す。「お月様がどこにもおらん……」と泣き出しそう。

 

 彼女の頭と同じくらいのテルテル坊主を天井からつるして「明日は晴れるよ」とささやく。安どの寝息が聞こえてきた。

 

 懐中電灯でお月様を捜した彼女が、今や2人の子供の母親。月日は静かに流れている。

(2009.09.21 毎日新聞「はがき随筆四季特集『月』」掲載)

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2007年9月19日 (水)

「K Y」

岩国市  会 員   沖 義照

 サラリーマン時代、製造業で生きてきた。少しでも油断をすれば大事故につながりかねない現場では「KY」という活動を実行していた。

 KYとは「危険予知」という言葉の頭文字をアルファベットで表現したものである。何か作業をしようとする時、それに伴って起こるかもしれない危険を、作業に従事する者が自ら考える。そして対策を講じた後に作業することで、安全を確保するというものである。

 KYとはこのことだと思っていた先日、テレビを見ていると若い女性が「あの人はKY」というような話をしている。話を聞いていると、この女性の言っている「KY」とは、「空気を読めない」という言葉の略称だという。

 最近の若い女性の言葉は、短縮された略語が多い。このKYもその一つで、危険予知とは全く関係のない略語であることを知った。

 そういえば、ここ最近の出来事で「KY」場面をよく見せられている。辞任表明をした安倍首相、それに続く自民党総裁選に手を挙げた人の中にもKYな人がいるように思う。

 空気も読めないし危険予知も足りないようにも見えるが、ここは我慢して、じっとこれからのお手並みを拝見するしか私には能がない。

 (2007.09.19 中国新聞「広場」掲載) 

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2007年9月 9日 (日)

「おとり」

 岩国市  会 員   沖 義照

 
どこの川を見ても、アユ漁が真っ盛りである。アユの掛け方に「友釣り」という方法がある。

 縄張りを持つアユの習性をよくとらえた釣り方だが、ひとつ気になることがある。友釣りと言いながら、「友」ではなく「おとり」を使っただまし釣りである。

 だまして引っ掛けたアユと、送り込まれたおとりアユに対し、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 川の中も陸の上も、今の世の中だましが横行している。だまし封じにおとりを送り込みたくなるところもある。オットリしていては、もらえる物ももらえないことになりかねないから。
  (2007.09.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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「自力本願」

   岩国市  会 員  吉岡 賢一

 
 「二百十日もことなく過ぎて村の祭りの太鼓が響く」―。幼いころ母が私に何度となく歌うように聞かせてくれた言葉が耳に残っている。
 

 二百十日は、ご承知の通り、立春から数えて二百十日目に当たる9月1日前後のことを言う。田んぼの稲穂が緑から黄金色に変わり、成熟期を迎える大切なこの時季に何度となく台風襲来の被害に遭ったことから、農家ではこの日を厄日として警戒を強めたといわれている。

 現在では9月1日を「防災の日」と決め、国家的な防災体制の構築と見直しや防災訓練などが実施されている。先人の防災への関心を基礎に、歴史に学んだ近代的災害対策が施されているはずなのに、災害は後を絶たない。しかも年々被害の規模が拡大している感じさえする。

 地球温暖化や温室効果ガスなどによる地球規模の異変の拡大が災害を大きくしている要因の一つと考えられる。その上、災害は忘れたころにやってくるから対応が後手に回ることが多い。

 
防災の基本は「自分の生命身体は自分が守る」ことを肝に銘じたい。そのために防災グッズの備え付けや避難行動の練習など自分に出来る防災態勢を整える努力が欠かせない。備えをすることで生じる気持ちのゆとりこそが防災の第一歩であろう。

(2007.09.09 中国新聞「広場」掲載)

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2007年9月 5日 (水)

「森岡ママの本に学ぶ」

   岩国市  会 員   樽本 久美

 府中市上下町のMGユースホステルの創設者森岡まさ子さんが、ついに念願の本を出版された。

 独身の時、私は一人でMGユースホステルを訪れた。ホステルに着くやいなや、「一緒にマツタケ狩りに行きませんか」。ホステラーの言葉で、疲れている重い足を引きずりながらマツタケを探しながら山を歩いた。

 

 初めて会った人たちと一緒にマツタケを探して、みんなでおにぎりを作って食べて、グラウンドゴルフをして、本当に楽しい時間を過ごしたことを思い出す。

 この本を読んで、まさ子ママのとびきりの明るさ、元気、勇気の原点を知ったような気がする。まさ子ママは、その年の目標や大事だと思う言葉を部屋の壁に張っている。「幸せになる言葉」を繰り返しているそうである。

 「出逢いを大切に、いまを生きる」「やさしい心が、幸せを招く」「心のチャンネルを切り替える」「あせるな、おこるな、いばるな、くさるな、まけるな」

 本のタイトルは「森岡ママは今日も笑顔で丘の上」。97歳の青春を生きると本の中に書かれている。多くの人に読んでもらいたい本である。まさ子ママは、いつまでも笑顔で長生きをしてもらいたい人である。

  (2007.09.05 中国新聞「広場」」掲載)

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2007年9月 1日 (土)

「美容クリーム効果?」

      岩国市  会員  井上 麿人

 「顔だけは若い」と冷やかされている。2年前から愛用している美容クリームのせいだ、と内心思っている。

 クリームは、妻が通販で購入した。結構高かったらしいが、肌に合わず不用になったものだ。「捨てる」というから、「もったいない」と、もらってみた。

 朝のジョギングが終わり、シャワーを浴び、ひげをそり終えると、クリームを手にとって、顔のあちこち塗り始める。香りがジジ臭くなく、少し薬っぽくていいにおいだ。

 なんとなく習慣になり、ずっとつけ続けていたら、最近、昔の会社の同僚と会ったとき、冒頭のセリフを言われ、まんざらでもなかった。

 家族に自慢したら、娘は、「お父さん、しわがのびたんじゃなくて、若い女の人を見て、鼻の下がのびてたんじゃないの」と笑った。失礼な。

 思うに、それまでクリームなんてつけたこともなかったから、よく効いて、しわが伸びたのか。「アンチエイジング」という言葉をよく聞くが、やっぱり金で若さは買えるのか、と考えさせられた。

 わずかな年金を、病院よりは美容に使い、いくらかでも若返り、心の充足につながれば、その方がいいではないか。とはいえ、妻あてに、美容クリームの試供品が続々と、送られ続けている。しばらくは、お金を払わなくても、若さは保てそうだ。

  (2007.09.01 朝日新聞「男のひといき」掲載)

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「順 番」

    岩国市  会員   吉岡 賢一

 連日の猛暑、ついに我が家の大黒柱がダウンした。昨今話題の熱中症らしい。普段から小食で、ぜい肉や皮下脂肪の蓄えがなく、暑さが骨身にこたえたのだろう。

 尽くすことは得意ながら、尽くされるのを嫌う働き者。ついつい寄りかかって横柄に生きてきた5歳上の同居人にとって、大黒柱の異変は、オロオロしながら過去を反省するには十分な効果があった。

 慣れない手つきでうどんを作り、おかゆも炊いた。少しずつ体力が戻ったころを見計らって「いいか、俺が先でお前さんが後という順番を違えるな」と、改めて関白宣言ならぬ哀願宣言をしておいた。

 (2007.09.01 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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