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2009年1月

2009年1月29日 (木)

「ウチのお風呂」

       岩国市  会 員   山下 治子

 風呂上りにドライヤーしていたら「お母(か)んたちって、いつまで一緒に入るん?」と息子が言う。「え? 二人が元気なうちはずっとよ」と返すと「お前んちおかしいって友達に言われる。兄弟入るのも変だって」。

 首をかしげる息子を一笑しながら「夫婦や家族だったら当たり前のことでしょう」と答えた。「一人シャワーより皆で湯船もいいもんだろう」と主人も同調。

 何のかの言いながら息子2階に向けて一声「兄ちゃん風呂行くぜ~」。
ふと額入りの色紙と目が合った。「仲良きとは楽しき哉」。多少難ありの家族だけれど実篤さん、今年もよろしくね。
  (2009.01.29 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2009年1月27日 (火)

会話に「定額給付金」は出てこず

    岩国市  会 員   片山 清勝

 幹線道路を避けて走る私の乗った小型循環バスに、70代後半の女性が「ヨイショ」とステップを上がって車内へ。一息つき、向かいの席に腰を下ろした。隣の女性と顔見知りらしい。

 薬の袋を見せあいながら通院話をしている。さらに「偽者の孫から電話がかかったいね」「どうしたっちゃん」「聞いとった通り電話を切ったいね」。「ご主人に長いこと会わんが、元気かいね」「私一人じゃあ世話できんので、施設にお願いしたんよ」。食品の値上がりは困っているが、このところの灯油の値下がりがうれしい、などなども。

 身近なことを地元言葉でさらりと話すが中身は重い。高齢者の元気な会話から、厳しい日々の生活と安心して暮らしたいという望みが伝わってくる。他の乗客たちも聴き入っていた。

 バスは坂を上り始めた。庶民のあえぎにも似た苦しそうなエンジン音、だが、2人の会話に「定額給付金」は出てこなかった。
  
 (2009.01.27 毎日新聞「みんなの広場」掲載)

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2009年1月22日 (木)

「イ チ」

    岩国市  会 員   山本 一 

 19年前、シェパードの雄を子犬で購入し「コロ」と名前を付けた。数日後、犬小屋に「イチ」と書いてあるではないか。

 よりによって何故私と似通った名前に変えたのか。飼い主である娘に強く抗議。すると「わざわざお父さんの名前にしたのに」と言う。

 そういえば、東京への単身赴任を家族に伝えたばかりだ。ほろりとして負ける。
以後11年間、この愛犬は「イチ」として、我が家に君臨した。

 家族が「イチ」と呼べば、こちらがびくっとする。私が呼ぶときも、何だかすっきりしない。今日も娘が「お父さん、イチの墓参りに行こう」と言う。
  (2009.01.22 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2009年1月20日 (火)

「毎年……」

    岩国市  会 員   樽本 久美

 毎年必ず、北海道の旅の写真の年賀状をくれる人がいる。21年前に長崎の五島列島のユースホステルで出会った人で、その人も旅が好きな人だった。

 私は、あまりの海の青さと居心地の良さに、予定を変更し、もう1泊することにした。たまたま同宿したというだけだったが、その人は波止場で一緒になって「どなたか(使えなくなった)JRの指定席を買ってくれませんか?」と頼んでくれた。

 今考えると、よくやったなと思う。今年も、その旅の便りで1年がスタートした。「明るく、笑って、少し冒険をして頑張っていこう」と新たな気持ちになっている。

   (2009.01.20 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2009年1月17日 (土)

「過失致死」

    岩国市  会 員   沖 義照

 趣味の木工で巣箱を作った。入り口としては、小鳥がちょうど入ることができるくらいの丸い穴を開け、庭の花水木に掛けておいた。

 先日、落ち葉の掃除をした折、巣箱をのぞいてみると、1羽のスズメが死んでいる。あっと驚いた。

 小鳥のためにと作った巣箱の中で硬くなって横たわっている。中に入ったスズメが小さな穴から出ようとしたとき、足掛かりになるようなものを取り付けていなかったことが原因ではないのか。

 戯れに作った巣箱のせいで、スズメが死んだ。何と言ってわびればよいのか。冬空の下、小さな亡きがらを両手でしばらく温めた。
  
 (2009.01.17 毎日新聞「はがき随筆」掲載」)

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2009年1月 9日 (金)

「施設を退職 感慨深く」

     岩国市  会 員   横山 恵子

 先日、約17年勤めた老人福祉施設を退職した。勤め始めて最初の1年は考える暇もないほどの忙しさで、いつ辞めようかと思ったこともあった。けれど息子たちにぶざまな姿だけは見せたくないという思いで頑張った。

 少しずつ慣れて行くうちに、仕事は厳しさの中に喜びもあるのだと感じるようになった。そして17年が過ぎた。この間にさまざまなことがあった。

 勤続10年表彰を受けたこと。台風で施設に泊まりこみ、避難して来た人たちのためにおむすびをつくったこと。顔に帯状疱疹ができてつらい思いをしたこと……。

 多少のいざこざはあっても、利用者の皆さんに喜んでいただこうという職員の思いは同じだからこそ、働き続けてこられたと思う。上司や同僚に感謝している。最後の日は、やはり泣けた。

 家に帰ると、夕食後に息子たちとお嫁さんが、花束と「お母さん、お疲れさま」と書いたケーキ、寄せ書きをくれ、また目頭が熱くなった。

 
これからは高齢の両親と脳梗塞の後遺症と闘っている夫を支えていこうと思う。
   (2009.01.09
 中国新聞「広場」掲載)

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「しっかり聴く」

         岩国市  会 員   安西 詩代

 傾聴ボランティアを半年前から始めている。介護施設でお年寄りの話したいことを、心をこめて聞くというのが傾聴。

 しかし、聞くことはできても、聴くことは難しい。100歳の女性は農業を続けられたので、指は鍬(くわ)の柄がぴったり収まる形で固まっていた。

 その手は歴史を語り、美しい。そして「今が一番幸せ」と言われた言葉がひびく。
頑張ってこられた話が、私の心に入り込む。

 これは、ボランティアではなく、心の栄養をもらい、豊かな心になるための私の勉強会。「あなたが聴いてくれて良かった」と言われる日を目指して……。
   (
2009.01.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2009年1月 7日 (水)

「ん」を食べた?

    岩国市  会 員   片山 清勝

 元日の朝「おじいちゃん、おめでとうございます」。帰省しなかった京都の孫から電話。

 「おせちを食べた?」と聞くので答えると、「ん」を食べたかとさらに聞く。意味を考えるが浮かばない。

 降参すると、ニンジン、コンニャクなど「ん」の文字を含んだものを食べたかと言う。続けて「それを食べると運が良くなるよ」と教えてくれたので「レンコンを食べた」と返した。「グー」と返ってきた。

 
 丁寧な孫の話し方が、嫁のそれに似ている。年始めの電話で小4の孫の成長を感じながら、幸運が孫に付いてほしい、そう願って受話器を置いた。
 
  (2009.01.07 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2009年1月 4日 (日)

「待ってますよ!」

       岩国市  会 員   稲本 康代

 
受話器をとると末娘からである。「ママ……赤ちゃんができた」「エッ、大丈夫なの?」。何度も流産している娘の心を知るだけに、まず心配する言葉が先に出る。

 結婚年齢も遅く、なかなか子宝に恵まれず、いろんな治療をしてやっと授かった赤ちゃん! 「子供ができないというのも何か意味があるだから」と元気付けながら、でも私の本心は「1人でもいいから……」と念じていた。

 出産予定は6月。それまでいろいろ試練がきっとあるだろう。でも「待ってますよ!赤ちゃん。無事にあなたと対面したら、うれし涙が止まらないでしょうね」。

  (2009.01.04 毎日新聞「はがき随筆」掲載」

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