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2009年2月

2009年2月24日 (火)

「雪うさぎ」

    岩国市  会 員   安西 詩代

 
一面真っ白になっている朝、熱が出て小学校を休んだ。

 母は外の雪が眺められる部屋に布団を敷いてくれた。うさぎ型に雪を固め、椿の葉を耳にし、南天の赤い実を目にした雪うさぎを枕元に持ってくる。

 熱のある手で触ると気持ちが良いが、ピョンと逃げてしまいそうな気がした。うとうと眠っている間に雪うさぎは溶けて逃げてしまい、2枚の葉と赤い実が水に浮いている。

 優しくかまってくれる母と雪うさぎは、病気の時の楽しみだった。久しぶりの雪化粧に、遠い昔の雪うさぎが、目の前を跳ねた。
 (2009.02.20 毎日新聞「はがき随筆;特集『雪』」掲載)

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「故郷の雪」

    岩国市  会 員   横山 恵子

 
中国山地の山あいにある私の故郷。当時小学生の私と妹が冬休みに泊まった時、見る間に雪が積もった。かまくらを作ってあそんだのはいいが、バスが不通となった。バスが通る所まで祖母が送ってくれるという。

 風邪気味だった祖父は「また来いよー」と見送ってくれた。50㌢の雪道を2時間ほど歩くと、バスが見えた。「おばあちゃん、早く早く」。息せき切って走った。

 動き始めたバスの最後部から「気―つけーやー」「ありがとう」と姿が見えなくなるまで手を振った。
亡き祖父母に、感謝と懐かしさで胸がいっぱいになった。
 (2009.02.20 毎日新聞「はがき随筆;特集『雪』」掲載)

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2009年2月19日 (木)

「見える言葉」

    岩国市  会 員   中村美奈恵

 手話サークルに入ったばかりの私は、いつか自分のエッセーを手話で伝えたいと思っている。でも、書いたときの気持ちをありのままに表現することができるのだろうかと不安だった。

 
 そんな思いに応えてメンバーである彼女は、私のエッセー「Xマスプレゼント」を読みながら手話を始めた。一つ一つの言葉を、指先で、表情で、体全体で、私に精いっぱい語りかける。いつしか自分のエッセーだということを忘れ、涙が出てきた。

 手話は、日常会話だけでなく心の中まで伝えることができるのだ。見える言葉に感動しながら伝えたい思いが一層強くなった。
  
 (2009.02.19 毎日新聞「はがき随筆」掲載」)

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2009年2月 5日 (木)

「ゆきごん」

    岩国市  会 員   鈴川 汎子

暖かい四国から雪の多い岐阜県関ケ原に、夫の転勤で移り住むことになったのは71年。転校への不安をいっぱい抱えた子供たちは 「ゆきごんのおくりもの」という絵本に出合った。

 いじめられっ子のみきおくんと彼が家来にと作った雪の怪獣「ゆきごん」とのお話。ゆきごんは溶けてなくならないうちに寒い所に行かなくっちゃと……。 

 「よし、ゆきごんを連れていこう」「うん、強いし溶けないもんね」「そうだよ、おねーちゃん」

 今年、郷里山□で見る雪に、みんなの合言葉だった「ゆきごんいるから大丈夫」を懐かしむ。
   (2009.02.05 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

     

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2009年2月 1日 (日)

「寒あやめ」

       岩国市  会 員   吉岡 賢一

 真冬の物寂しい庭の片隅に、清楚な薄紫の寒あやめが、春を先取りするかのように今年もかれんに咲いている。

 石臼の水に氷が張る寒さ、庭木の陰にもかかわらず、葉は青々と茂り、日々数本の花を楽しませてくれる。根っこはと見れば、ショウガを連ねたような頑丈な塊が、地中深く根ざしている。

 あの花にしてこの根。たおやかさに包まれたしたたかさ。寒風に耐えて咲くエネルギー源になっているのだろう。足を地に着け、暑さの夏は地中に栄養を蓄え、寒さの冬に花開く。寒あやめに似た人生も悪くない。
   
(2009.02.01 毎日新聞「はがき随筆」掲載」)

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