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2009年4月

2009年4月28日 (火)

「大きなランドセル」

     岩国市  会 員   吉岡 賢一

「おれ、1年生になったよ」。はじける笑顔で入学式の報告にやってきた。彼なりの夢と希望に胸躍らせているようだ。普段より一段とハイテンション。名前は「天使のはね」なのに、学用品とじいの期待も一緒に詰め込んで、身の丈に合わぬ重い大きなランドセル。

 最初から、甘さたっぷりの「ふゆう柿」ならそれもいい。8年たって「渋柿」のままならそれもまたいい。甘くても渋くても、柿が柿であるように、人間に変わりがあるものか。 

 強く、優しく、たくましく、できれば賢く……など多くは望まぬ。元気な笑顔、それが最高
  
2009.04.28 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2009年4月27日 (月)

「賭け」

   岩国市  会 員   山本 一

 私は19761225日、妻が一週間遅れの31日に自動車の運転免許証を取得した。私は自動車教習所、妻は自動車学校で、9月から同時に練習を開始した。

 
この頃、会社の仲間たち10名くらいが頻繁に我が家に集まり、酒を飲み仕事の議論を戦わしていた。誰かが「奥様とどちらが早く免許証を取るかで賭けましょう」と言い出した。全員が妻に賭けた。彼らは私の運動神経が鈍いこと、忙しくて殆ど練習の暇が無いことを知っている。

私は警察で検定試験を受ける方式だが、妻は認定自動車学校でそこを卒業すれが良いのである。妻に勝つと賞品は一人取りになるが、負けると一人で全員に払わなければならない。だが、仲間と言っても私はリーダーであり、妻の手前もある。受けるしかないと覚悟した。

結果は私が仮免2回、本免1回でパスして最後で逆転勝利となった。当時の常識は仮免で数回、本免も3回くらいで、信じられない成績だった。奇跡と言う他はない。2人分の免許証取得経費が当時の金で約70万円もかかった。負けていたら更に大変な出費で、妻も負けて喜んだ。
  (2009.04.27 朝日新聞「声;特集「賭け」掲載)

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2009年4月25日 (土)

「春のまなざし」

    岩国市  会 員   中村 美奈恵

 
命日の今日、お墓に向かい2人で手を合わせる。友人の息子は、小学校に入学して間もなく交通事故で亡くなった。元気でいれば今年二十歳になる。私は彼女が深い悲しみの中にいる時同じクラスの保護者として出会った。

 
息子を連れ毎年ここを訪れるのは、悲しみを思い出させてしまうのではないかと案じた。けれど13年の歳月が流れるうちに、小学生だった息子は大学生へと成長し、一人前の会話ができるようになった。私もまた少しずつ彼女に歩み寄れた。

 
「えいちゃん、見ていますか。お母さんと私は、かけがえのない友達になりました」
   (2009.04.25 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

  

 

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「心に響く言葉」

    岩国市  会 員   中村 美奈恵

 人は出会いを積み重ねていく中で、誰もが心に響いた言葉を持っているという。私にも大切な言葉がある。

 三十七歳で三人目を妊娠した私は、つわりで体調を悪くし、とても気弱になっていた。高齢での出産と十一歳も離れた子どもたちをちゃんと育てられるだろうかと不安な気持ちになっていた。そんな私に友人が、ある言葉を掛けてくれた。
 
 「頑張って産んでごらん。きっと世界が広がるよ」

 彼女の経験から出たこの言葉は、先の見えなかった私の目の前をパッと明るくしてくれた。「この子を頑張って産んで育てよう」と思わせてくれた。

 三男が生まれて九年。あの時の彼女の言葉通り、私の世界はどんどん広がっている。進級するたびに新しい先生と出会い、息子を通して、たくさんのことを学んでいる。 

息子の友達のお母さんとして知り合った友人からは、発達障がい児のことを教わり、新聞作りを始めた。取材先での出会いは、私をまた新たな方向ヘと導いてくれる。親子で手話サークルにも通い始めた。息子のピアノの先生は、私の先生でもある。親子一緒に立つ六月の発表会は未知の世界だ。 

「もっともっと、目の前の世界を広げよう」。私の心に響いた言葉は、今も輝き、私を励まし続けている。
  (2009.04.25 中国新聞「こだま」掲載)

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2009年4月23日 (木)

「朱書きの戒め」

    岩国市  会 員   片山 清勝

 
「教えさせてもらう」と大きく朱書きし、余白へ説明の要点をびっしり書き込み、赤線も引いてある。パソコン講師デビューの日の心構えが残っている自作のテキストが見つかった。

 朱書きから5年。そのことはすっかり忘れ、講師慣れし「これでいいのかな」と思いながら大きな工夫もなく過ごした。講師をするという緊張感、退屈させない進め方、新しい手法を取り込むなど、眠っていた初心を朱の8文字が覚ましてくれた。

 
受講者が喜び、そこに新しい手応えを感じるテキスト。初心の心構えに経験を織り込んで見直そう。朱色の鉛筆と一緒に。
  
2009.04.23 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2009年4月21日 (火)

「虫の息」

    岩国市  会 員   井上 麿人

 エッセイは題材で決まる。そんな記事を読み、さっそく題材探しに出かけた。見つからない。冬眠を決めた。

 啓蟄が過ぎたころ、穴からはい出してみると、仲間のエッセイが掲載されている。「うちのお風呂」。夫婦という題材なら書けそうだが、ご一緒となると手が止まる。

 象のことは書けても、象使いのことは書けない。「風の歌を聴け」の一節にもある。4月2日、仲間の勉強会に参加した。

 講師の支局長は、エッセイには毒も必要だが、写真のようでもあることと付け加えられた。題材、毒、写真。いまさら穴には帰れない。春眠することに決めた。
  (2009.04.21 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2009年4月14日 (火)

「未知数…」

    岩国市  会 員   樽本 久美

 
新学期が始まった。

私には子供がいない。長年このことへの「わだかまり」があった。人一倍子供が好きなのに。

 特に、可愛い子供に出会うと、なぜ、コウノトリは来てくれなかったのかと思う。更年期になってやっと分かった。人には、それぞれ役割があるということが。

 
新1年生の可愛いランドセル姿を見ていると、私までうれしくなる。「頑張って」と声をかけたくなる。多くの可能性にエールを送りたくなるのだ。

 そして、私にも未知の可能性があるのではないかと錯覚さえ覚えてしまう。錦帯橋の桜が満開である。
   (2009.04.1
4 毎日新聞「はがき随筆」掲載)  

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2009年4月11日 (土)

「負けないで」

   岩国市  会 員   横山 恵子

 
夫は脳梗塞の後遺症で手の握力も低下した。以前は力強い宇を書いていたのに、今はミミズがはったようだ。

 先日「お父さん、指相撲してみん」と言ってみた。お互い歯を食いしばり苦笑いしながらの勝負は、私の負け。しかし、握力はあると思うと、負けてもうれしかった。

 それでは、と左手も。なかなか決着がつかないので、私がずるをし人差し指を使うと、夫がアハハハ……と大声で笑った。

 こんなに声を上げて笑うのは久しく聞かなかったなー。大いに笑って、病気なんか吹き飛ばして! 賞味期限切れだけど、たくましい?女房が付いているから。
    
 (2009.04.11 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2009年4月 8日 (水)

「私の親鸞本」

  岩国市  会 員   片山 清勝

 
「毎日楽しみにしている」「読みやすい」-。昨年暮れ、親鸞聖人報恩講へお参りしだ時、中国新聞に連載中の小説「親鸞」が話題になった。

 
その「親鸞」の切り抜きが二百回を超えた。切り抜きは我流で製本している。一冊目は九十六回、二冊目は百九十八回をそれぞれ最終回にした。表紙は小説の「親鸞」をスキャンして印刷し、目次もつけた。製本した物をめくりながら「これは世界で唯一無二の親鸞本」と一人悦に入っている。  

 
「親鸞」は、その日紙面に出る名前や地名、言葉にルビがついている。これがうれしい。読みやすさと親しみやすさを感じさせる。古い時代の言葉や名前は読みづらい。特に仏教用語などは難解さも加わり、その先へなかなか進めないという経験をしている。

 
以前の文化面で作者は「二百回で念仏法難までたどり着き、四百回で完結したい」と語っていた。これから、どんな展開になるのか楽しみだ。連載が終わった時、「私の親鸞本」は本棚の大切な蔵書となり、慌ただしく過ぎる日々の潤いになるだろう。
   
2009.04.08 中国新聞「広場」掲載)    

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「人を大事にする企業であって」

   岩国市  会 員   横山 恵子

 私は子育てが一段落して、パート6年を含め約23年間働き、この1月初めに退職した。老人福祉施設では不規則な仕事だったが、両親が留守を守ってくれ、子供だちからエネルギーをもらい、何とか働くことができた。

 
もちろんつらいことも多々あったが、上司や同僚に恵まれ、仕事にやりがいと喜びを感じることができたことは、これからの人生の糧となるだろう。しかし今の世の中、リストラの嵐が吹き荒れている。不要になったら物のように捨てるなんて、あまりに無慈悲なやり方ではないか。

 昔は終身雇用が普通だったし、会社と社員は運命共同体だった。しかし現在、利益優先で即戦力を求める会社を前にして、就職という入り□で自信を持てずにいる若者のことが心配だ。

 若者は未熟で当たり前。未来ある若者を採用したからには、どうか温かい目で会社の一員としての役割を担わせ、一人前に育ててやってほしい。経営者には先見性が求められるとともに、社員あっての企業ということを忘れてほしくない。 

 
少子高齢化が加速する中、将来は人手不足となるだろう。その時、人を大事にしている企業が生き残ると思う。それこそ企業の品格が問われる時代がくるだろう。
   (2
009.04.06 朝日新聞「声」掲載)

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2009年4月 7日 (火)

「名ホスト」

   岩国市  会 員   沖 洋子

 
三日見ぬまの桜かなと言うが、この季節三日を空けずに錦帯橋詣でをしている。夫と阿吽の呼吸で身支度を始めると、愛犬ハートリーも察してぴょんぴょんと跳ねている。

 橋のたもとに降り、お気に入りの石垣にもたれてしばし至福のときを持つ。ハートリーは私たち夫婦の間に座り込み、幸せそうな顔をしている。

 ここでの楽しみは桜もさることながら人間ウオッチングである。子ども連れの若夫婦、女子大生のグループ、犬を連れた老夫婦が話しかけてくる。この時のハートリーは最高のホスト役を演じ、外出時には無骨な夫婦の欠かせない相棒となっている。
  (2009.04.07 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2009年4月 6日 (月)

「君は業師」

    岩国市  会 員   安西 詩代

 
「あら、また」。朝、玄関を開けると人聞か食べたようなミカンの内袋が吐き捨ててある。先日から何回も掃除している。

 玄関前の畑に取り残しのミカンが数個ある。「もう誰なのよ」と声を出すと、ピーッと強く鳴いてヒヨドリが飛んで逃げた。

 ヒヨドリは小さい鳥を追い払い、存在を誇示するように大声で鳴いて、可愛い鳥だとはとても思えない。しかし、このミカンの外皮はどうしてむいたの? 

 歯でしごいたように内袋を出すという華麗な業がヒヨドリにできることにびっくり。この鳥への評価はがらりと変わった。ヒヨドリはすごい業師である。
  (
2009.04.06 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2009年4月 3日 (金)

「命の重み」

    岩国市  会 員    吉岡 賢一

 二階の窓から見える、高さ十㍍はある雑木の最上部にアオサギのつがいが巣をかけている。一羽が卵を抱き、もう一羽は寄り添ったり、狩りに出掛けたりし、子育て中の夫婦の姿がうかがえる。

 日本に分布するサギの仲間では最大といわれるアオサギ。大きな身体で「何であんな危なっかしい高い木の上で」とハラハラさせられる。風が吹けば、木は右に左に大きく揺れる。雨を避けるすべもない。 

それでも天敵を避けるには、もってこいの高い木の上。すぐ近くに海があり、田んぼも畑もあって餌は豊富だ。彼らの子孫繁栄の条件は整っているのだろう。 

アオサギ夫婦の懸命な子育て、そして命を大切に守ろうと協力している様子を孫たちにも、しっかり見せてやっている。

地上には早くもツバメがやってきた。早速、巣作りに余念がない。

これからの季節。生き物のすべてが命の躍動を始める。どんな小さな命でも、粗末にしていい命はない。みんな生きている友達なのだ。人間の強さと優しさで、小さな命を大切に守ってあげる教育は欠かせない。
   (2009.04.03 中国新聞「広場」掲載)

     

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「はやぶさで初夜」

    岩国市  会 員   山本 一

 ブルートレインはやぶさに乗って新婚旅行に行った。行き先は信州で、リュックにキャラバンシューズのいでたち。どこに新郎新婦がいるのか見分けがつかないと言われた。
 

 乗ったらすぐに食堂車へ。持っていた花束をテーブルの上に飾ってもらう。客は私たち2人だけ。黒ビールで乾杯した。

 結婚して最初の夜が、この寝台車。一番値段の安い3段の最上段で向かい合いの席だった。他の客に遠慮して、小さい声で「おやすみ」と言い合っただけ。

 この4月で結婚40周年になる。はやぶさが消え、急に思い出が遠ざかるような気がする。
 (2009.04.03 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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「ウグイス」

    岩国市  会 員   横山 恵子

「ホーホケキョ」という嶋き声で目が覚める。自宅の前は道路だが、まだ自然が残っている。季節の移ろいが感じられる。幸せに思う。

 ピンクの桜と黄色いじゅうたんのように咲いている菜の花とのコントラストを楽しみながら、犬と散歩する。心安らぐひとときだ。

 「ホーホケキョ」。ぐんと近くで聞こえた。何と小さな鳥がススキに止まり、のどを震わせながら鴫いているではないか。飛び立つまで見ていた。

 うぐいす色とは、ほど遠く、スズメを小さくしたような鳥だった。見たのは初めてだったので友に話した。「横山さんに会いに来たのかもよ。エッセーに書いてもらおうと思って…」と冗談交じりで返ってきた。
 「それでは後学のためにも」と思い、百科事典をめくった。
 「ウグイスは飼うにも捕らえるにも許可証が必要。『ホーホケキョ』は『法華経』と聞こえるところから『経読鳥』とも呼ばれる。ホトトギスは卵をウグイスの巣に産み、ウグイスに育てさせる…」
 人間界にも子育てを放棄しているホトトギスのような人がいる。知らぬとはいえ、せっせと子育てをしているウグイスがいとおしくなり、エールを送りたくなった。
   (2009.04.03 中国新聞「こだま」掲載)

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2009年4月 1日 (水)

「宇宙と交信」

    岩国市  会 員   山下 治子

 いつもの時間にケータイが鳴り「ハロー! ディス・イズ宇宙ステーション、錦帯橋の桜が咲いているのが見えます」とクルー若田になりすましているのは単身赴任中の夫。

 話の調子を合わせ「こちらただ今夕食準備中。そちら今晩の宇宙食は何ですか」と答えると「レトルトの親子丼にコンビニおでんです。みそ汁は頑張りましたあ……」。

 年がかさんだ近ごろ、心配する者はお互い同士となり、やっとばかばかしい会話が戻ってきた。「GWは宇宙急便で帰ります。宇宙航路も千円ですからヨロシク~」「了解!」。待ってるよ、お父(と)ん、宇宙のお土産も。  

  (2009.04.01 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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