「鉢入り娘に」
岩国市 会 員 吉岡 賢一
我が家にやってきてもう5年になる鉢植えのピラカンサス。今年ほど見事に花をつけたことはない。昨年末、完全りタイアした家主が、気持ちと時間にゆとりをもって、優しく接してきたからだろう。
高さ50㌢ほどの樹態を包み込むように、小指の先ほどの愛らしい真っ白い花が、今を盛りと咲いている。その清楚な姿は、純白のドレスを身にまとった、初々しい花嫁さんを見るようだ。「お気に召すまま、あなたの色に……」とささやかれているようなときめきをおぼえる。
今や我が家の大黒柱となり、姉や妹だちからも絶大な信頼を得た妻もこんな気持ちで嫁いで来たのだろうか。涙にかすんでぼやけて見えた一人娘のウエディングドレス姿。彼女もこんな心境になったのだろうか。遠い昔を思い出しながら、水やり・手入れに精を出す。よく見ると小さな花の一つ一つが、花弁の奥に小粒の卵を抱いている。
順調に行けば、秋の盛りには大きな実を結び、見事な色づきを見せてくれるに違いない。鉢植えだけに水やりは欠かせない。ともすれば、真夏の直射日光にも神経を使う。このように、手をかけ・気にかけ・声をかけてやれば、期待にたがわず成長し実を結ぶ。まるで子育てや人材育成によく似ている。
急がず慌てず手塩にかけ、ゆったり気分で寄り添えば、お気に召すままあなたの色に成長してくれるに違いない。
(2009.05.30 毎日新聞「男の気持ち」掲載)


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