「一枚の手紙」
岩国市 会 員 安西 詩代
今は亡き母が好きだった歌舞伎の雑誌をめくっていたら、ハラリと何かが落ちた。 それは一枚の懐紙だった。
表裏には、びっしりと母の字で何かが書いてあった。「おおたにが燃えた」懐かしさも手伝って一気に読んだ。昔話のようだった。
ある日、ある所で、旅人の「負うた荷が燃えている」のを見た周りの人が「おおたにが燃えている」と一生懸命に知らせた。なのに旅人は、自分には関係ない話だと思ってそのまま歩いて行く。そのうち旅人の背中の荷は燃え上がり、大変なことになってしまうという内容だった。
何事も人ごとだと思わないで、しっかりと他人の言うことを聞かないと、災いが自分にふりかかってくる。そういう教訓だと思った。
母は誰かに伝えたくて一枚の懐紙に書いていたのだろう。それが私の目の前に出てきたということは、どんな意味を持つのだろう。きっと母は六十二歳の今の私に言いたかったに違いない。
「反省して、もう少し他人の話を聞いて、その言葉の中から自分のためになる助言、忠告を見つけなさい」一枚の懐紙は、あの世からの私への母の手紙だと思っている。
(2009.05.27 中国新聞「こだま」掲載)
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コメント
いい話ですね。
投稿: anne | 2009年5月27日 (水) 11時00分