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2010年6月

2010年6月27日 (日)

「鏡よ鏡」

      岩国市  会 員   吉岡 賢一

 毎朝、必ずひげをそる。

どこかに出かけるあてもなく、誰かに会う予定はなくてもひげはそる。

滑らかになったそり跡にローションをはたく。

顔と共に気持ちも一瞬引き締まる。

 完全りタイアのこのごろは、ひげそりさえもおっくうになる時もある。

1日放っておくだけで、ごま塩のごわごわひげが顔を覆う。 

 そってもそっても目に見えて伸びるひげ。

なのにおつむの毛は伸びるどころか日に日に退化。

数は減りそぞろ吹く風になびく。

同じ首から上なのに不公平じゃないのひげと髪の毛。

物言わぬ鏡に揺れる男の哀愁。
   

         2010.06.27 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2010年6月23日 (水)

「蛍」

   岩国市  会 員   山下 治子

 
親友の子息の訃報が届いたのは、アジサイが咲くこの時期だった。
 享年30。借しむべき若者は、自分の葬儀に集まった人々を思いやってか、土砂降りの雨が続く梅雨空をいっとき晴れ間に変えた。まるで両親への無言の謝辞のように思えた。

 患いの中で子息は「治ってみせる」と病魔と闘い、奇跡が起きると信じたが……。通夜の席で彼女と会した時、私は事故で失いかけたわが子を思い、もしかしたら彼女の座っている席にいたかもしれなかった我が身を重ね、かける言葉をなくした。

 生きようとして生きることがかなわなかった子息の無念を思うと、いまだ後遺症を引きずるわが子が健常であったなら「ぜいたくな死に方するな」と殴り倒しただろう。事故現場は明らに自分殺しの様相だったから。

 彼女があいさつをした。

 「息子が、長生きしてくれ、と言いました。私は生きなければなりません。どうか力を貸してください」
 かすれて絞り出すような声だったが、はっきりと。

 その後、彼女は大学に入り直し、障害者のための活動を始めた。障害を残しながら何とか社会復帰できたわが子に代わり、私も彼女の手伝いをさせてもらっている。

 このたびは七回忌の法要。河原の蛍が飛び始めた。あの光のひとつずつが、帰ってきたよと言いたげな、命の灯に見える。

   (2010.06.23 毎日新聞「女の気持ち」掲載)

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2010年6月16日 (水)

「最期の朝」

   岩国市  会 員   片山 清勝

ご主人様のウオーキングに合わせて朝3時50分にセットされている目覚まし時計。その中で働き続けて何年になるだろうか。少し前から針を進める力が弱くなり、ベルを鳴らそうとすると息苦しい。

今朝はかすかな音でやっと「リリリ……」と鳴らしたが、30分遅れだった。ご主人様のウオーキング出発を遅らせてしまった。ご主入様は「いよいよ、替えどきか」と力の衰えに気づいてくれた。狭い住み家から私たちを取り出したご主入様。「ご苦労さん」と慰労してくれ、回収袋に入れてくれた。私たちは、務めを終えた乾電池。
  (2010.06.16 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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「指さし確認」で交通安全

   岩国市 会 員  片山 清勝

 高齢の歩行者が遭遇する交通事故は、道路の横断中が多いという報道を目にした。思うに、自分は大丈夫という油断や不注意が原因ではないか。

 私は道路を横断するとき、左右の確認はルール通りにしている。加えて、顔の動きに合わせて、顔を向ける方を人さし指でさして確認する。安全なら「よし」とつぶやいてから横断を始める。目視だけより、しっかり安全確認ができる。特にスピードを出して接近する車の確認に有効だと思う。 

この「指さし確認」は、安全確認の方法として多くの企業が取り入れている。企業の事故防止と共に、自分の身を守ることに役立つと工場勤務の経験から学んだ。  

車の運転中は通学する児童の列など注意が必要な時、「指さし確認」をしながら進む。運転歴は四十数年になるが、無違反である。今後も通院や買い物、ボランティア活動で運転する必要がある。自分の指で安全を確かめながら、歩行も運転も無事故で行きたい。

2010.06.16 毎日新聞「みんなの広場」掲載)

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「涙こらえて読む「ぞう」の物語」

    岩国市   会員   貝  良枝

 小学校で読み聞かせをしている。今回は6年生。昨年他の人が読んでいるのを聞いて涙がこぼれそうになった、「かわいそうなぞう」を読むことにした。

 戦時中、上野動物園で行われた3頭のゾウの殺処分の話だ。娘はこの絵本を見て「小学生の時、○○先生が読んでくださった。読みながら先生が泣き出し、泣き終わるのを待つのにどうしていいかわからなくなった」。と話してくれた。

 読み聞かせの時、いつもなら児童のほうに目をやり様子をうかがうのだが、今回ばかりは見ることができなかった。自分が泣き出さないよう読むのが精いっぱいだった。

 児童はじっと聞き入ってくれた。大切に育て愛された命を殺さなければならなかった時代状況と飼育員の心の痛みを、少しでも分かってもらえたらうれしい。

              (2010,06,16 朝日新聞「声」欄 掲載)

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2010年6月 5日 (土)

「挑 戦」

      岩国市  会 員   横山 恵子

「雑音を聞かせて悪いけど、少しだけ吹かせて」と一応、夫に許可を得てフルートを吹き始める。習い始めて2ヵ月。退職したら楽器を習おうと思っていたが、時間だけが過きた。

2月に孫が生まれたので「よし! 誕生日に吹いて祝ってやろう」と決心して申し込んだ。不安だったが、我が子ぐらいの先生が「今のはよく音が出ましたね」とほめてくれるので、やる気が出た。思うように音は出ないが、うまく吹けた時はうれしくなって、もっと頑張ろうと思う。


 食べず嫌いだったのか。若い時からやっておけば良かったなあ。あーあ、勉強も。
    
2010.06.05 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2010年6月 3日 (木)

友の水死 今も心痛む

   岩国市  会 員   横山 恵子

 5月25日付広場欄の「水難救助には浮き袋を」を読み、小学校時代のつらい出来事を思い出した。

 近くの川で一緒に泳いでいたAちゃんが深みに入り、そばにいた私にしがみついた。それは想像だにしないものすごい力だった。私が潜ると手を離したので何とか助けることができた。

 おぼれる人の救助には、浮袋か長い棒が必要なことを身をもって知った出来事だった。

 夏休みには祖父母の住む田舎に泊まりに行った。近所のSちゃんが「明日は岩国のおばさんの家に行くんよ」とうれしそうに話してくれた。

 しかし、その2日後、Sちゃんは変わり果てた姿で帰ってきった。子どもたちだけで泳ぎに行きおぼれてしまったのだ。

 Sちゃんのおとうさんは連れて帰るタクシーの中、生き返るのではと、ずっと抱いておられた。その夜、私は祖父の後を思い足どりでついって行った。

 Sちゃんは、まるで眠っているようだった。お母さんは信じられないといった様子でSちゃんの頭や手をなで話しかけておられた。胸中を思うと今も心が痛む。

2010.06.3 中国新聞「広場」掲載)

                                          

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2010年6月 1日 (火)

黒米のおいしさ知る

   岩国市  会 員   山本 一

浜田の「きんたの里」へ元勤務先の飲み仲間とバス旅行をした。妻が黒豆を煮たのが好きなので、土産に黒豆を買った。

ところが、帰ってから妻に渡すと黒豆ではなく、「黒米」と書いてあるではないか。びっくり仰天したが、妻は「知っているよ」とまんざらでもない顔なので、少しほっとした。

翌日、妻がパートに出かけ、一人での昼食となった。炊飯器を開けてまたびっくり。何と真っ黒なご飯だ。とても食べたくない。

恐る恐る食べてみると結構おいしい。京都の和菓子屋へ嫁いだ長女が話を聞きつけ、食べてみたいと言うので、残り全てを送った。

先日長女が帰省した時、「夫が試作した」と言って、土産に黒い大きなむすび2個を持ってきた。黒米を使ったおはぎだと言う。食べてみると中にあんが入っていて、なかなかの味である。

黒豆と間違えて買った黒米だが、家族の話題になった。今度行くことがあったら、ちゃんと黒米を意識して土産にしよう。

2010.06.1 中国新聞「広場」掲載)

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「ド ジ」

   岩国市  会 員   山本 一

友人と居酒屋に行き「君は東京からなので僕が払うよ」と、私が格好良かったのはここまで。財布を見てびっくり仰天。「金がない。間違えた」

最近、うっかりミスが多く、あれこれと工夫をしている。今回もカードや免許証が入った財布からお金だけを抜いて、別の財布に入れた。もし、財布を落としても被害を最小限に抑えるためだ。出掛けに「財布を取り間違えないように」と自分に念押ししたのに……。

 慌てて妻を呼んだ。小言を言われただけでなく、店に居座られ、余計な出費になった。更なるドジ対策が必要だ。
  (2010.06.01 毎日新聞「はがき随筆」)  

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