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2010年10月

2010年10月31日 (日)

「父からの絵手紙 元気もらう」

   山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 80歳を過ぎ肺気腫を患っている父の楽しみは絵手紙だ。この時季はおいしい秋みーつけたとばかりに、次々と絵手紙が届く。「秋の宝石キラキラ」のブドウ。「どかんと秋」では、はがきいっぱいにダイナミックに描かれたナシ。今治市に住む父の絵手紙をながめていると、ふるさと愛媛を思い出し、私の心は満腹になり、元気が出る。

 今年の初め、体調を崩し絵手紙を描く気力を無くした父。気休めにコンテストへの応募を勧めた。それが、まさかの審査員特別賞。80歳で手にした賞状に描く気力がよみがえった。ほくほくのサツマイモの絵手紙には「好きなときにちょっと描く。その日の気分でのびのびと。気楽な心が味のある絵にしてくれる。思いついた言葉をそえて」の文字がある。

 最近は、母の「これだけ描けるんだから、ぼけてないよ」の言葉に励まされ、描き続けていると聞いた。父には病気に負けないで、これからも感動いっぱい、感激いっぱいの絵手紙を届けてほしいと願っている。

  (2010.10.25 愛媛新聞掲載)

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「受ける勇気」

岩国市  会 員   中村 美奈恵

 先日、乳がん検診に行った。マンモグラフィー検査は乳房を2枚の板で挟んで押しつぶし、エックス線撮影をする。涙が出るほど痛く嫌だった。

数日後、乳がんの発見が遅く、若くして亡くなられた方の番組を見た。花嫁姿が愛らしく、無念さが伝わった。私の友人も数年前、生死の境をさまよった。無事を祈り、退院の時には花を贈った。「ありがとう」と元気な声が嬉しかった。

検査の痛みは乳房のしこりをはっきり写し、早期発見のためだと思おう。自分のこれからと大切な人たちのために、検査を受ける勇気を持ちたい。
   
2010.10.31 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

    

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2010年10月26日 (火)

「もう一度」

        岩国市  会 員   安西 詩代

40代のある日、新宿駅の雑踏の中で「もしもし」と肩をたたかれた。見知らぬ男性に声をかけられるのは、独身時代以来のこと。一瞬、胸がときめいた。

「お茶をご一緒にいかがですか」「いえ、私には夫がいますのでお断りします」と光の速さで会話が頭の中を駆け巡った。笑顔で振り向くと彼は小声で「スカートの後ろのファスナーが開いてますよ」。

あの妄想の時の頭の回転の良さ。今のさび付いた頭にも刺激を与えると、少しは回転するのだろうか。テレビでの認知症のテストで、机の上の物4個が、3個しか思い出せない。

 (2010.10.26 毎日新聞「はがき随筆」)

  

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2010年10月19日 (火)

「人間の都合」

岩国市  会 員   沖 義照

 早朝、庭に出ていた妻が戻ってきた。「イノシシがおりに入って捕まったそうよ。見に行かない」と誘う。私は行かなかった。間もなくすると帰ってきて「大きなイノシシがおりの中で暴れていたわ。目がとってもかわいかった」と言う。

 今年も春過ぎから、近くの畑を荒らしているという話は聞いていた。山すその畑に鉄製のおりが仕掛けられているのも、見ていた。

 そのおりの中で暴れまわっているイノシシを見に行く気にはならない。後のことを思うと、つぶらな瞳を直視できない。「これで安心ね」朝食の支度をしながら妻は明るく言うが。
  (
2010.10.19 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2010年10月17日 (日)

救出に命の重み思う

   岩国市  会 員  吉岡 賢一  

 チリの鉱山落盤事故で、地下に閉じ込められた作業員が、 一人また一人とカプセルで引き上げられた。 

 地獄の底て神や仏に守られ、人間の英知による救出作戦で33人全員が助け出されたことは、まさに世界中の拍手喝采を浴びる値打ちがある。 

 救出された一人は「これからまた何があってもに正面から立ち向かっていける。決して神は私を見放さないと信じていた。われわれを救うために偉業を成し遂げてくれる人たちがいると、私たちは確信していた」と述べている。

 生きることに対する執着、生への飽くなき挑職の姿勢は、いつの世も神仏はお見通しであり、必ず味方してくれる時が来る。大きな力を授けてくれると信じている。

 つらさの向こうに見えるほのかな明かりを信して、いま一度命の重みを思い起こし生き抜くことの尊さに思い至るとき、人間はひと皮むけるのだろう。

 生きていることは本当に素晴らしい。それもちょっと前向きになれたら、さらに素情らしい人生が開けるのだと思う。

  (2010.10.17 中国新聞「広場」掲載)

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2010年10月 9日 (土)

古希を迎え趣味深める

   岩国市  会 員   片山 清勝

  先日、古希を祝って岩国市営バスの1乗車が100円になるという「敬老者優待乗車証」が市から届いた。錦帯橋は無料で渡れるとある。うれしいが、いよいよ高齢者の一人に認定されたかと、ちょっと複雑な気持ちになった。
 特別の趣味もなく、40年余りを会社人間で過ごし、その束縛が解けたらただの在宅老人にならないかと、一抹の不安を抱きながら定年を迎えた。
 それから間もなく10年。70歳となる。幸いなことに、この間の機つかの出会いが定年前の不安を解消してくれた。
 日々の出会いを短い文章にして投稿、自己啓発を図ろうという同好会。粘上で世にひとつの焼き物を楽しむ創作の集い。地域の歴史や文化を勉強する会。今はこれらにすっほりとはまっている。
 そして仲間と教わり、刺激を受けることで、高齢というイメージは薄れ、充実の日々を実感し、感謝している。
 そうはいっても高齢。これからも体調に気を配りながら、マイペースで今の楽しみを深められるよう精進していこうと思う。

   (2010.10.09 中国新聞「広場」掲載)

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2010年10月 8日 (金)

「間に合いそう」

       山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 「禁煙治療にも保険が適用されます」。このポスターを見てから主人の禁煙レースは始まった。「最初はたばこを吸ってもいいんだって。薬を飲んだら、だんだん吸いたくなくなって6割の人はやめられるらしい」。そう言いながら最後の1本が終わった。 

予想は、ダメな4割の人だったのに「禁煙の秘けつは家族愛」の呪文が効いたのか、三日坊主どころか、10日も頑張っている。薬の効果も絶大で吸いたくないそうだ。今、家の中にはたばこの代わりにアメがごろごろしている。薬代もアメ代も家計から投資してるんだからリタイアしないでね。

  (2010.10.08 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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2010年10月 5日 (火)

「一件落着」

      岩国市  会 員   山本 一


 突然左耳で「がさがさ」
と音がする。異物があるらしい。私の耳掃除担当、妻の出番だ。しばらくほじくっていたが「何も見えない」と言う。自分でやってみる。激しい音だ。

 「何かある。また、変な病気になったかもしれない」と不安が募った。ここ数年、体のあちこちが突然不調になる。「またか」。すでに病院は閉まっている。眠れないまま、翌朝、耳鼻科に駆け込んだ。

 
医者は「1㌢ほどの白髪が鼓膜に当たっている」と言った。「黒髪だったら見えたのに」。妻の悪態を聞きながら晩酌を倍にして祝杯をあげた。
 (2010.10.05 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

   

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