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2010年12月

2010年12月30日 (木)

「花が咲いとる」

岩国市  会 員   貝 良枝

 
生け垣に直径5㌢ほどの白い花が3個。「この木にこんな花が咲くのか」。いたずらかと思って枝を見るが、確かに咲いている。通りがかりのご老人も見上げ「ありゃ、花が咲いとる」。

 「そうなんですよ。花が咲いているのが不思議で……」と言った時、形の違う葉が見えた。「あっ、サザンカですね。生け垣に混じったサザンカです」

 するとご老人は「そうじゃろ。ヒイラギに、こねえな花は咲かん。咲いたらびっくりじゃ」。

 
「ですね」。謎が解けて知らない人とあっはっは。サザンカ3個で笑いが起きるほど、ほっこり温かい冬の午後だった。
  (2010.12.30 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2010年12月29日 (水)

「来年はいい年かも」

       岩国市  会 員   貝 良枝

 
朝9時、ゴミ出しをしていないことに気づく。徒歩1分のゴミ集積所だけど、ゴミ袋を車に積み込む。もうこの時間では、収集車が来た後かもしれない。そうなるとゴミ袋を持ち帰らなくてはいけない。それを見られるのはカッコ悪いから車で運ぶ。
 
「エコじゃないよなぁ」と独り言を言いながら集積所に行くと、まだ収集車は来ていなかった。安心したら、ラジオからギターの音色とほんわかした歌声で「トイレには、それはそれは、べっぴんさんの……」と歌っている。ひょっとしてこれは「トイレの神様」?
 
車を止めて聴き入った。目の前の田舎の風景に溶け込むような穏やかな歌だった。前から気になっていた歌で、聴いてみたいと思っていたからちょっとうれしかった。
 空は晴れ。ゴミ出しは間に合った。気になっていた歌も聴けた。今日はいい日かも。
 
それから1カ月後、ボランティアの集会があった。その集会で「この歌を聴いてください」と「トイレの神様」がかかった。
 
「おばあちゃん、ありがとう ホンマにありがとう」まで聴いたら涙があふれてきた。ふと見ると、周りの人も涙している。みんな同じ気持ちだったんだ。優しい歌にまた出合えた。優しい人たちと同じ場所にいられた。今日はいい日だ。
 
大晦日の紅白歌合戦でこの歌がまた最後まで聴けるらしい。来年はいい年かも。
  (2010.12.29
  毎日新聞「女の気持ち」掲載)

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2010年12月22日 (水)

検定準備で故郷学ぶ

     岩国市   会 員   片山 清勝

 「故郷の歴史や文化を多くの市内外の人に知ってもらい、それをご当地検定に膨らませよう」とことし1月、12人の有志で「岩国検定実行委員会」を立ち上げた。

 準備すること約1年。11月末に第1回岩国検定を実施した。19歳から90 歳までの百余人、県内はもちろん、北陸は石川県からも応募があり会員みんなで喜んだ。無事検定を終え、合格認定証を発送、ほっとしている。

 岩国市は1940年の発足から数度合併し、市域は県で2番目の広さ。この広い地域の何をどれだけ知っているのか、と問われたら、答えるのに窮する。そんな不安を抱きながらも、会の魅力にひかれ、仲間入りした。

 資料を読んだり、調べたり、問題を考えたりする中で多くのことを教わった。それらは歴史や文化に産業など広範で、故郷を再認識するというより、初めての学習に似ていた。

 会では今回作成した資料を集大成し、次回検定の参考本の編集を話し合っている。市民の目線から見た故郷の力、それを織り込めたらこの上ない喜びになる。

  (2010.12.22 中国新聞「広場」掲載)

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2010年12月21日 (火)

「ピコピコキュ」

      山陽小野田市 会 員   河村 仁美

 シャンプーを始めた美容師さんの手が一瞬止まった。「奥さんの地肌、硬すぎです。地肌が硬いと老けて見えますよ」の声に大ショック。白髪のない黒髪が唯一の取りえだったのに。

 それから会う人に「ねえ、地肌って動く?」の質問攻め。みんなの地肌は頭の上でピコピコ、耳の上でキュッと面白いくらいよく動く。えっ、私だけ?

 妻の一大事に、老けてもらっては困ると思った主人。せめて現状維持をと、無精な妻に代わって地肌をピコピコキュと優しくマッサージ。きれいになるのは無理だけど、地肌の効果は期待して大丈夫だよね。
 (2010.12.21 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2010年12月14日 (火)

「趣味は何ですか」

岩国市  会 員   稲本 康代

リズム音痴の私が、フォークダンスを始めて1年になる。苦手なことに挑むと苦労が付きまとい、何度やめたいと思ったことか。しかし、70代や80代の人たちが軽やかにステップを踏む姿を見ると、負けてはならないと自分を励ましてきた。フォークダンスの練習は脳トレの時間の様でもある。ひとつ覚えたと思うと、次々に新しいステップを覚えなければならない。

やっと覚えたと思っても、次の時にはすっかり忘れている。80代になったころ「趣味は何ですか」と聞かれたら背筋を伸ばして「フォークダンスです」と答えられるように頑張ろう。
  (2010.12.14 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

  

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2010年12月 5日 (日)

「隣の棟上げ」

        岩国市  会 員   片山 清勝

 隣の空き地で棟上げが始まった。レッカー車のアームが伸び、太い棟木が揺れながらゆっくりつり上げられる。上で待つ2人のとび職がそれに手をかけ、掛け矢を使ってほぞに打ち込む。交互に打ち下ろされる掛け矢はコーン、コーンと乾いた心地よい音をたてる。終わり近くなると2人が同時に掛け矢をたたく。
「よっしゃ」の声で棟木が収まる。声のたびにたたずまいが締まるのが分かる。
 
その様子を夫婦と娘さんだろうか、腰をおろしてじっと見守っている。組み終わるたびホッとする3人の表情が何ともいえない。
 
ふと我が家を新築した十数年前を思い出した。 仕事帰りに誰もいない建築現場を毎日訪ねては、その日の作業を確かめ、昨日と違ったところを家で待つ妻に話す。妻もそれで安心していた。
 
子どものころ、家の建築現場は散らかっている木切れを使って遊べる楽しい場所だった。カンナからヒュルルと飛び出す薄く長い削りくずを手品のように見つめた。大工の技の極みということは後になって知った。最近は加工された木材が持ち込まれる。建築現場もシートで囲まれ、中の様子が見えないのは寂しい。
 
家を成すには大変な苦労が伴う。しかし、新しいものが出来上がる楽しみがあるから頑張れる。見上げながらうなずく建主に、かつての自分が重なる。
 
新しい隣人が越してくるのは、いつだろうか。
  (2010.12.05 毎日新聞「男の気持ち」掲載) 

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2010年12月 3日 (金)

「アメちゃん」

   岩国市  会 員   樽本 久美

テレビで「大阪人はアメを持っているが、東京人は持っていない」という面白い話を聞いた。たくさんしゃべった後にアメをなめる方法と、しゃべらないためにアメを□に入れる方法があると言っていた。また、他人とのコミュニケーションの一つとしてアメを使うとも。
 私もバッグには何種類かのアメが入っている。これからの季節、アメが大活躍してくれる。せきをしている人にあげたら大変喜ばれたこともあった。これからもアメを大切にして多くの人に優しく接していきたい。一番あげなくてはいけない人は亭主かな?
  
2010.12.03 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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「オンブバッタ」

    岩国市  会 員   沖 義照

 
夏場に勢いよく伸びた菜園の雑草を抜きとり、耕運機で耕したあと白菜を丁寧に植えておいた。
 
久しぶりに様子を見に出ると、大きくなり始めた葉が穴だらけになっている。あんのじょう、大小のアオムシがとりついている。「ごめんな」とつぶやきながら1匹ずつ取り除いた。
 そのとき、葉の陰からバッタがはい出してきた。見ると2匹がセットのオンブバッタだ。体長4㌢くらいのメスの上に、体長2.5㌢どのオスがちゃっかりと乗っかっている。白菜にとってはこれも害虫には違いないが、アオムシと同じように踏みつぶすことができない。見るからに固いきずなで結ばれたカップルに見えるからであろう。
 それにしてもオンブバッタのオスは、なんとも安易な生き方を選んだものだ。エサはメスが探してくれるし、そこへ行くにもメスにしがみ付いておけばいい。すべてメスに頼って生きている。まさにヒモのような生き方だ。
 
そんなことを考えていると、近頃の私も何やらオンブバッタに似ていないとも言えないと思えてきた。退職後は稼ぎはなく、買い物から調理まで三食すべて奥さん任せ。出かける時に車に乗せてもらうこともある。ほとんどのことは任せきりで、出番といえば、めったにない力仕事と枝切りなどの高所作業くらいだ。
 オンブバッタの姿に、ちょっぴり自分の最近の暮らしぶりが重なった。
   
2010.12.03 毎日新聞「男の気持ち」掲載)

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