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2010年12月 5日 (日)

「隣の棟上げ」

        岩国市  会 員   片山 清勝

 隣の空き地で棟上げが始まった。レッカー車のアームが伸び、太い棟木が揺れながらゆっくりつり上げられる。上で待つ2人のとび職がそれに手をかけ、掛け矢を使ってほぞに打ち込む。交互に打ち下ろされる掛け矢はコーン、コーンと乾いた心地よい音をたてる。終わり近くなると2人が同時に掛け矢をたたく。
「よっしゃ」の声で棟木が収まる。声のたびにたたずまいが締まるのが分かる。
 
その様子を夫婦と娘さんだろうか、腰をおろしてじっと見守っている。組み終わるたびホッとする3人の表情が何ともいえない。
 
ふと我が家を新築した十数年前を思い出した。 仕事帰りに誰もいない建築現場を毎日訪ねては、その日の作業を確かめ、昨日と違ったところを家で待つ妻に話す。妻もそれで安心していた。
 
子どものころ、家の建築現場は散らかっている木切れを使って遊べる楽しい場所だった。カンナからヒュルルと飛び出す薄く長い削りくずを手品のように見つめた。大工の技の極みということは後になって知った。最近は加工された木材が持ち込まれる。建築現場もシートで囲まれ、中の様子が見えないのは寂しい。
 
家を成すには大変な苦労が伴う。しかし、新しいものが出来上がる楽しみがあるから頑張れる。見上げながらうなずく建主に、かつての自分が重なる。
 
新しい隣人が越してくるのは、いつだろうか。
  (2010.12.05 毎日新聞「男の気持ち」掲載) 

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