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2011年6月

2011年6月28日 (火)

「おぬし やるな」

     岩国市  会 員   安西 詩代

 母の日に嫁から薄紫色とピンクの優しい色のタオルが2枚贈られた。趣味のハイキングにちょうど良い。「ありがとう。優しい色ね」と言うと「お母さんのイメージの色です」とうれしいことを言う。

 若い嫁だったので、私の知っている事はうるさがっても教えた。今年で結婚14年目。子供3人を育てている。近頃は意見が合わず丁々発止する場面もある。たくましくなってきた。

 このタオル色は私への期待の色だろう。言葉でなく自分の意志を表現するうまい手段を見つけたことに嫁の成長を見る。優しい色の姑(しゅうとめ)になろうかな。

        (2011.6.28  毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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「活かそう、高齢者パワー!」

   岩国市  会 員    吉岡 賢一

 二十数年前のPTA会長さんの発案で、地元小学校の樹木の枝切りをする計画が持ち上がった。
 当時の役員が何人か集まり、それぞれが所属する地区社会福祉協議会や自治会連合会などに応援を求めたところ、一気に話がまとまった。

 およそ60人が、脚立やチェーンソー、刈り込みバリカンなど、機材を持ち寄り3時間汗を流した。
 見事に校舎周辺に明るさが戻った。

 現役のPTA役員を除けば、当日参加された人の平均年齢は70歳を優に超えていたのではないか。
 孫やひ孫が通う小学校での奉仕活動に、一声掛けるだけでこれほどの地元パワーが結集出来る地域の潜在能力に驚いた。
 年齢に関係なく、学校や公共施設を自分たちの手で守るという地元への愛着と、地域を支える一人であるという強い自覚がうかがえた。

 作業後、「教室の日当たりがよくなり、健康的になった」と校長先生から感謝された。
 経験豊富な高齢者パワー。無駄にしてはもったいない。

            (2011.6.28  朝日新聞「声」 掲載)

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2011年6月22日 (水)

「命」

        岩国市  会 員   井上 麿人

暮れに母が逝った。通夜の客も帰ったころ、一人の女性が入ってきた。初対面の女性は「私はこの方の最初の子供で、あなたとは11歳離れた姉です」と名乗った。その夜彼女は、母と死別した父方で育ったこと、親権が切られていたこと、弟がいることなどを話した。長く遺影の前に立ち、未明に帰っていった。  

私は父の顔を知らないが、2人の夫を亡くしていた母の火宅を知った。暗い斎場の柩の前で白い時聞か過ぎた。

 納骨も過ぎたころ、姓の違う兄と名乗る人から、疎遠と非礼を詫びた手紙が届いた。会いたいとも。5人兄弟になった!
  (2011.06.12 毎日新聞「はがき随筆」文学賞)

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2011年6月17日 (金)

「むぎの秋」

       岩国市  会 員   稲本 康代

麦が黄金色になり刈り取られる季節を麦秋という。5月末から6月の初夏のころである。近ごろは見かけないが、昔は至る所に麦畑があり、田んぼには裏作として麦が作られていたものだ。そして収穫が終わると麦わらでホタルかごを作ったり小さな敷物を編んだ。

以前、長崎に旅をした時、列車から見た佐賀平野の麦畑が一面、黄金色に輝いていたあの光景を今でも思い出す。言葉で言えない感動で眺めた。

身の回りから段々と懐かしいものが消えていくのは寂しい限りである。もう一度、麦畑を復活できないものだろうか。
 (2011.06.17 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2011年6月16日 (木)

友に聞く畑作りの心

   岩国市   会 員   片山 清勝

 運動不足解消にと、少し速足で畑が続く川沿いの道を歩いていた。「よ―い」と声がして麦わら帽子をかぶった人が手招きしている。野菜作りが趣味の同級生だ。

 自慢の畑を説明してくれる。10 種類以上の野菜が色濃く育っている。 見慣れた野菜に交じって、初めて目にするものもある。それぞれの野菜作りで工夫したことや思い入れを開く。

 時にはせっかく育てているものを抜いたり、もぎ取ったりしながら、その育ち具合を具体的に話してくれる。

 そんな畑の隅に、苗を植えた小さなポットがたくさんある。収穫を終えた後の畑に植える苗を育てているという。畑は休む間がないのだと知る。

 その畑はよく肥えた黒い土で、押さえるとふわっとして作物に優しそうだ。土は生きていると感した。

 これまで、この畑で育った野菜を何度も届けてもらっているが、畑を見るのは初めてだ。ひと回りしたところで、みずみずしい葉物などを2袋に詰め、持たせてくれた。

 妻は思わぬ収穫を喜ぶ。作る人の野菜への思いやりを知った。いい梅雨の晴れ間だった。

  (2011.06.16 中国新聞「広場」掲載)

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2011年6月13日 (月)

「新婦品質保証書 両親が願い込め」

    山陽小野田市  会 員    河村 仁美  
 
 28年前に行われた私たち夫婦の結婚披露宴で、私の両親は、主人に「品質保証証明書」なるものを手渡した。私を新車に見立て、「素晴らしい車に恥じない運転をお願いします」との趣向だ。
 
 久々に2人で保証書を読み返してみると、「過酷な条件下でも利用できますが適度の
休息と思いやりの補充により性能を一層引き出せます」「返品交換には応じかねますが責任をもって修理再教育することを保証します」とある。

 最近は休息しすぎの気もするが、名車だったのか運転が上手だったのか、これまでのところ故障も返品もない。
 
 ところでこの保証書、有効期限はいつまでなのだろう。廃車にして新車購入、ということにならぬよう、お互いに努力しましょうね。
  (2011.06.12 読売新聞「気流広場;特集『結婚』」掲載)
 

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2011年6月12日 (日)

「一葉との旅」

  岩国市  会 員   片山 清勝

落ち葉に覆われた道が続く。大型車が舞い上げた一葉が私の車のフロントに。ちょっとおどけたようにあいさつ。そのままくっついた。先導するようでもあり、旅を楽しんでいるようでもある。目で会話しながらしばらく一緒。急なカーブで別の風に乗り換え、私との旅を終えた。

 隠居し落ち葉となったあの一葉。この小さな旅で何かを見つけたのだろうか。風を楽しんだかな。いや、何か役目があって飛び乗ったのだろうか。仲間と離れた新天地でどう過ごすのかと興味が続く。定年から10年。多彩な仲間と出かける私と同じに自由を楽しんだのか。
  (2011.06.12 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2011年6月 9日 (木)

「物の準備とともに心の準備も」

   岩国市  会 員   安西 詩代

 東京から岩国に転居したのは1995年、阪神大震災の年の4月だった。東京に住んでいた時は、いつ地震が起こるか分からないので、子どもたちは学校では防災頭巾を座布団にしていた。

 家庭では震度3くらいの地震を感じると、①ガスの元栓を閉める②マンションの玄関ドアを開ける③頭巾をかぶり机の下にもぐる、この一連の動作をいつも子供たちと一緒に練習していた。

 大きめのリュックに非常用品と、預金通帳の番号や保険証の写し、親しい人の電話番号を書いた小さなノートを一緒に入れていた。水も6本1箱を保存用とし、お風呂の水はなるべくためていると役に立つ。そして家族の落ち合う非難場所を決めていた。幸い大きな地震を経験することもなく、岩国に転居した。

 今でも水1箱と旅行用バッグを非常用として置いている。これが役に立たないのが一番いいが、このたび東日本大震災が起きたように、災害は地震国日本のどこでいつ起こってもおかしくない。想定の上限を決めないで今できる準備をしよう。心の準備もきっと役に立つだろう。そろそろ保存水の賞味期限を点検しよう。
     (2010.06.09 朝日新聞「声」掲載)

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2011年6月 3日 (金)

「温めますか?」

  岩国市  会 員   樽本 久美


 コンビニにトイレを借りに入った。何も買わずに出るのは気が引けるので、おにぎりを一つ買った。レジで「温めますか」と聞かれた。この人はお弁当と間違えているのかな。

 「なんで温めるのですか?」と聞いたら「おにぎりは少し温めた方がおいしいですよ。温めるお客様もいらっしゃいますよ」
 

「それではお願いします」と私。すぐに車の中で食べたら、なんとおいしいではないか。東日本の被災者の人たちの顔が浮かんだ。どんなに温かい食事がおいしいか。おにぎりを温めるのは最初で最後にしよう。

   (2011.06.03 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2011年6月 2日 (木)

「アクセント」

山陽小野田市  会 員   河村 仁美

今年は母校の入学式が中止の話を聞き、愛媛から東京の大学に入学した当時思い出した。「この中に四国の人はいますか」の教授の質問に手を挙げて読まされたのが「箸を持って橋の端を渡る」の文章だった。

 「四国の人はアクセントが違うんですよね」と言われて、今まで言葉なんてあまりに何気なく使っていたことに衝撃を受けた。時は流れ、山口県に住んで23年。実家で過ごした年月を追い越したが、愛媛弁を卒業できないでいる。他人から指摘され違いを知った娘が「子供は母親の言葉イコール標準語と思って育つんだからね」とつぶやいた。

2011.06.02 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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