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2011年10月

2011年10月29日 (土)

「熊手のかすがい」

      岩国市  会 員   吉岡 賢一 

 

朝6時、ドーンと花火が上がる。小学校運動会決行。我がことのように色めき立つ。

 

手作りのいなり寿司や煮しめ、冷やした果物などをひっさげて決められた見物席へ急ぐ。プログラムと首っ引き。カメラ構えて右往左往。

 

やがてお昼。2人の孫を囲んで両親と双方のジジババがそろって大人が6人。お隣は子供1人に大人が7人。そのお隣も大人が9人。会話がはじける。「子はかすがい」とは両親をつなぐ役目をいうが、孫という名のかすがいは、ジジババに限らず親せき一同をも、熊手のような末広がりにつないでくれる。

  (2011.10.29 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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2011年10月27日 (木)

「色あせぬ友の輝き」

  岩国市  会員  吉岡 賢一

 この秋、五十数年ぶりに本格的な稲刈りに汗を流した。同級生の友の作業の手伝いなのだ。
 彼は農家の養子だが、繊維製品会社に勤めた後、文字通り定年後の六十の手習いで、約5千平方㍍に及ぶ米作りに挑んだ。
 その悪戦苦闘ぶりを同級生が集まる飲み会のたびに聞いていた。
 
 昨年までは「あまり無理をするなよ」と冷やかし半分で終わっていた。
 今年4月、そろそろ古稀を迎えるに至り、彼らと語らって「体力減退はお互い様。少しでも手を貸そうではないか」と手伝うことにした。

 私の場合、本格的な稲刈りは小6の時以来のこと。足手まといにならないようにすれば、枯れ木も山のにぎわいだ、それらしい仕事があるだろうと開き直ってもう1人と一緒に臨んだ。

 先月末、現場に着くと「これがあんたたちの仕事」とカマを渡された。
 コンバインがターンしやすいように田んぼの四隅を手で刈り取る。
 「こうやれば簡単だから」と3株か4株刈るのを教わった。手伝った2人の作業は夕方まで続き、16カ所も手で刈り終えた。
 「ありがとう、お陰で仕事が3倍はかどったよ」と彼の声は弾む。
 こちらは体調回復に3日はかかったが、あの笑顔ですべて帳消し。

 出会いから半世紀以上。愚痴も自慢も織り交ぜて、いまなおさりげなく寄り添える友は、稲穂に勝る黄金色の輝き。

         2011.10.27 朝日新聞「声」 テーマ「親友」 掲載

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2011年10月24日 (月)

「初 秋」

   岩国市  会 員   山下 治子

 

もうじき運動会。「パパが速く走れる靴を買ってくれた」と孫が大喜びで見せに来た。今人気のスーパーシューズだとか。「本当に速くなるの」と言うと「競争しようや」。孫は自信たっぷりに両手をスタートに構えた。 

 

息子の合図で走ったが、あっさり負けた。スニーカに履き替えた。ソックスを履いた。靴ひもを締め直したが、全部負けた。

 

息子は「その年で大したもんや」と肩をたたいた。5歳の孫が「運動会、絶対来てね」とVサインで帰った後、宵闇に自分の秋をしみじみ感じた。

2011.10.24 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2011年10月21日 (金)

「台風一過の通学」

   岩国市  会 員   片山 清勝

 

台風で錦帯橋が流失した翌年、その下流の橋も流れた。橋の代わりは渡し舟。小学生は集団登校。初めのころは、舟が沈まぬかと恐れ、黙って身動きもせず、じっと座ったまま。舟は弧を描いて向こう岸に着く。6年生が先に降り、下級生の手を取って降ろした。

 後に仮橋が完成。船頭さんにみんなで「ありがとう」と言った。あれから60年余。増水した流れを見ると思い出す。その乗り場への道筋は宅地に変わり、当時をしのぶものは消えた。変わらぬのは、錦帯橋の下を通り抜け、流域に恵みをもたらす清流。永遠に続いてと願う。
 
  (2011.10.21 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

     

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2011年10月17日 (月)

「ムカデのヤツ」

岩国市 会員  貝 良枝

 田舎暮らしには害虫はつきものだ。特に夏のムカデは厄介だ。
 ムシムシする梅雨のころから何度対面するやら。
 寝ていてもカサカサという音を聞こうものなら、もう寝てなんかいられない。その音源を確認するまで寝られない。
 防備もしている。
 火ばさみにスプレーが部屋の隅に鎮座するのが夏の光景だ。

 ところが彼岸花が咲く秋だというのにムカデにかまれた。
 3センチほどの小さなヤツだったので痛みはすぐに治まったが、もう3日たったというのに腫れは引かずかゆい。秋になってかまれるとは・・・。

 夏、あんなに注意していたのに。ヤツめ。

        ( 2011.10.15 毎日新聞「はがき随筆」掲載 )

   

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2011年10月 7日 (金)

「一挙両得」

   岩国市  会 員   安西詩代


 プロ野球が佳境に入ってきた。阪神ファンの夫は「なぜ、そこで打
ないんだ」「バカだな、おまえは」「何をぐずぐずしているんだ」と大声でテレビに怒鳴る。近所の人には2人暮らしの我が家ゆえ、夫婦げんかとしか思えない。

今年は対処法を考えた。夫が文句を言い始めると一緒になって「そうよ、ダメな選手よね。何億ももらい過ぎよね」「こんないい球、打ないなんて」と夫の数倍の悪口を言うと「そりゃ、仕方ないよ。毎回打てることはないよ」と選手の肩を持つ。この作戦、功を奏したと同時に私のストレス発散にもなる。

 (2011.10.07 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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