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2012年1月

2012年1月30日 (月)

お斎と母の味

   岩国市   会 員   片山 清勝  

 毎年、年の瀬に「親鸞聖人報恩講」が営まれ、退職後は欠かさずお参りしている。昨年も寒い朝だったが、参拝者で堂内はいっばいだった。法座が終わるとお斎を頂いた。野菜や穀類を中心とする精進料理。この日も地元でとれた新鮮な材料がおいしく調理されていた。このお斎を頂くと肉や魚をそれほど口にできなかった終戦直後の食卓を思い出す。

 わずかな広さの畑で両親が作る大根や玉ネギ、ジャガイモなどがおかずの中心だった。保存できるサツマイモやサトイモもよく並んだ。これらが煮しめや、おひたしになって食卓に上った。キュウリやカボチャ、トマトなど色鮮やかな季節野菜が加わると食欲が増した。

 同じ食材を使いないながら、毎日の食事を工夫していた母はすごかったんだな、とつくづく思う。こうした親の愛情のおかげでひもじい思いはしなかった。

 豊かさが当たり前のようになっている現在、私たちの命をつないでくれている食べ物と、それを作ってくれる人たちへの感謝を忘れてはいないか。お斎を頂き、しばし懐かしい思い出に浸りながら、わが身を振り返らせてもらった。

  (2012.01.30 中国新聞「明窓」掲載)

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2012年1月26日 (木)

世話役の責任果たす自信がない(老化する心)

岩国市

  会 員   山本 一

退職して丸8年が経過した。地域の活動や趣味の会では一転して若手と呼ばれ、世話役を依頼される。今も、所属する趣味の会から要請を受けているが、かたくなに断り続けている。

入社して42年間、一貫してマネジメント中心の仕事で過ごした。組織の一人ひとりが自分の特性を生かし、命令や指示ではなく、自分で考えて行動し、組織としてまとまる時、最大の力を発揮すると信じてきた。そのマネージャー、すなわち組織の世話役は、関係する沢山の人たちの人生に少なからず影響を与える。時に、その責任でつぶされそうになったが、経営管理への思い入れと心の若さで乗り越えられた。

目下、体のあちこちに異常をきたし、数軒の病院通いを続けている。心も同じように老化していると実感している。とても世話役の責任を果たす自信がない。一番の危惧は「自分が楽しくやれる自信がない」ことである。

これからの人生は楽しいことを選んでやろうと心に決めている。ましてや趣味の世界で、マネジメントで苦しむのでは何をやっているか分らない。老化した心と対峙して自問自答。

2012.01.26 朝日新聞「声」掲載)

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2012年1月16日 (月)

孫の守りで妻支える

岩国市  会 員   山本 一

昨年10月、妻が小さなパン屋を始めた。毎週日曜日だけ、午前11時から自宅玄関がにわか店舗となる。

67歳にしての妻の新たな出発は、私の生活に少なからず影響を与えた。看板やチラシなどのパソコン作業や周辺の掃除、テーブル類の配置、車の移動など早朝の開店前準備は私の役割になり、生後11ヶ月になる孫の守りが降りかかってきた。

娘は以前から妻との約束で、土曜日は我が家に孫を預け、趣味の会に参加している。開店前日とあって、妻は仕込みなどで手が取れない。さらにその翌日は娘が店の応援に来る。開店以来、土日はずっと、私は孫の守り役となった。

ある日、妻と娘に「2人共自分の趣味で楽しそうだが、こちらは子守で土日は何もできない」とつい言ってしまった。

悔やんだが遅い。「孫がかわいそう」の妻の一言が胸に刺さった。

年頭にあたり生活の軌道修正をあれこれ模索している。

2012.01.16中国新聞「広場」掲載)

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2012年1月14日 (土)

「苦い教訓」

        岩国市  会 員   中村 美奈恵

 

昨秋、一人暮らしをしている大学4年の息子が「財布をなくした」と電話してきた。前の夜、電車に乗るときはあったのに、降りるときにはなかったという。駅に届けたが朝になってもまだ見つからないらしい。
 
 財布の中には、現金のほかに免許証、学生証、キャッシュカードなどが入っていた。弱々しい声で「財布も気に入っていたのに……」と言う。その年の元旦、就職活動を頑張る息子に私が買ってやったものだ。

すぐに警察に届け、カードを止め、免許証などの再発行手続きをするよう言いながら、私の方が気落ちしていた。スーパーのアルバイトでお金をため、教習所に通い、一週間前にやっと手に入れたばかりの免許証だったからだ。戻ってほしいと願いながら、所持金がなくなった息子に現金書留を送った。
 
 それから3ヵ月たったある日、「財布が見つかった」と連絡があった。駅と反対側の荒れ地にあったという。年末に草刈りが行われた際、見つかったそうだ。中にはカード類と泥だらけの4円が残されていた。おそらく現金だけ抜き取って、ホームから投げ捨てたのだろう。雨にぬれた無残な財布を「母さんには見せられんよ」と言った。
 
 拾ったものは届ける。世の中には、そんな常識が当てはまらない人がいる。 この春社会人になる息子の苦い教訓となった。

2012.01.14 毎日新聞「女の気持ち」掲載)

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2012年1月13日 (金)

「自分の器をもっと大きくしたい」

    岩国市  会 員   安西 詩代

 

初詣でおみくじを引いた。末吉だったが、「神の詞」を読むと心に響いた。「一升枡には一升しか入らない。無理に入れるとあふれてしまう。もっと人のために働いて容器を大きくすることが必要」ということが書いてあった。

なるほど、今年はもっと人のために働かなければ、今の私の小さな容器ではあふれてしまう。どうしたら大きな容器になれるの? 年の初めの難題となった。

数年続けている傾聴ボランティアは月1回の訪問なのに、つらいときや他に楽しい誘いがあると心が揺れるときがある。「ボランティアだから……」と休んでしまうのではなく、「ボランティアだからこそ」と休まないことを心がけよう。自分で約束したボランティアは、契約したのと同じだということを忘れてはならない。

今年も施設に入所している97歳の方が待っていてくださる。彼女の人生のお話は、毎回聞かせて頂いても新しい発見と驚きがある。しっかり心を込めてお話を聴かせて頂いて、自分の行く道の指針にさせて頂く。私の小さな容器が少しでも大きくなり、豊かな心になれるよう。

  (2012.01.13 朝日新聞「声」掲載)

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2012年1月12日 (木)

「頑張れ友よ」

        岩国市  会 員   林治子

スーパーでばったりと友に会う。人づてに彼女が乳がんで片方を取ったことを聞いていたので、どのように声をかけていいのかと迷っていた。

すると彼女の方からいきなりしつこいセールスの話。「断ってもしつこいのよね。パッと片肌脱いで、この手術の傷が目に入らぬかと言ってみたらどうじゃろね。びっくりして飛んで逃げるやろうね」と言ってアハハと大笑い。

こんな冗談が言えるんだと感心。でも月1回は術後経過のため病院に通っていると聞き、がんの恐ろしさを知った。彼女に-ルを送りたい。

  (2012.01.12 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

 

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2012年1月10日 (火)

「久しぶりの旅行・別府・阿蘇を満喫」

         岩国市  会 員   樽本 久美

 

昨年12月、軽い圧迫骨折になったものの、年末にはなかなか取れない九州の宿が偶然にもとれたので、急きょ旅行に行くことになった。年末はゆっくり休もうと思っていて風邪も引いていたが、義母も旅行中だったので、「今しかない」と思い、同月30日、夫と一緒にマイカーに乗り込んだ。
 やはり、旅行はいい。日常生活から離れ、何もかも新鮮に見える。山口県周南市からフェリーで2時間余り。大分県別府市に着き、早速ホテルに直行した。夕食は自慢のバイキング。さすがに種類が多く、「これでもか」というほど食べてしまった。温泉のお湯も最高だった。

翌日は、お目当ての、熊本県南阿蘇村の絵本作家、葉祥明さんの絵本美術館に向かった。着くと目の前が草原。本当にゆっくりできる所であった。昔、何度も読んだ絵本の場面が浮かんできた。ついに来たのだと実感して、ついつい万歳をした。

そこで地図を見せてもらったら、なんと、詩人・画家、大野勝彦さんの美術館もすぐそばにあるとのこと。これも偶然か。1月中旬に岩国市に講演に来られる方である。さっそく、大野さんの美術館も訪ねてみた。なんと、大野さん本人に会うことができ、話もすることができた。二十数年前、両手切断という大事故に見舞われた元農業従事者だそうだが、義手で詩や絵を描いていた。言葉に重みがある。本当に「すてきな人」に出会うことができて、いい旅になった。
   (
2012.01.10 朝日新聞「声」掲載)

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2012年1月 6日 (金)

「ゆ ず」

    岩国市  会 員   山下 治子

余命を告げられた義父を病院から連れて戻り、年明けまで我が家に泊まってもらった。義父はお正月が近いから帰宅できたと思っている。その日は冬至。何よりお風呂に入りたがる義父をゆずをたっぷり入れた湯に夫が付き添って入った。「足が伸ばせてなんと気持ちいいのお」。義父宅は立派な五右衛門風呂だから足が伸ばせないのだ。ゆずの香りに気づき「気持ちいいのお」と何度も。 

 この時期、私は惜しげもなく風呂にゆずを入れる。義父が植えたゆずは鈴なり。ジャムにコショウにゆずみそ。義父からの忘れられない贈り物だ。

  (2012.01.06 毎日新聞「はがき随筆」)

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