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2012年3月

2012年3月30日 (金)

「手 紙」

   岩国市  会 員   樽本 久美

 
大学生時代、下宿をした。大島のおばあちゃんはたいそう心配した。「久美が下宿してだいじょうぶかいね」と。いつも遊びにいくと、私の大好きなイモを食べさせてくれた。そのおばあちゃんに母がそっくりになってきて、私も母にそっくりである。
 その母が足を悪くして、家の中でもつえが放せない。たまに母の家にいくと「2階の部屋のあれをとってきて」と頼まれる。
 ある日、母の机の引き出しを開けると、たくさんの私からの手紙があった。下宿先から出した手紙や母の日のメッセージカードなど、よくもこんなものをと思うものまで捨てずにとってあった。
 大学生時代、母はよく小包を送ってくれた。そこには必ず「手紙」が添えてあった。母からの手紙には愛情が詰まっていた。思いやりが感じられた。残念ながら私は母にな ることができなかったが、その時の「おまもり」は今も持っている。
 結婚したら必ず母親になるとは限らない。子供のいない夫婦も多い。今まで何度も「お子さんは?」と聞かれた。何度も何度も嫌な思いをした。この年になってやっと聞かれなくなったけれど。
 「みくちゃん、元気ですか?」
 私の心の中の子供に手紙を書いてみた。
 今はたまに「みくちゃんあての手紙」を、私のノートに作成中。
   (2012.03.30 毎日新聞「女の気持ち」掲載)

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2012年3月29日 (木)

「老化対策」

     岩国市  会 員   檜原 冨美枝

 
親譲りなのか、難聴になり知人との会話もなかなかつらい。時折、トンチンカンな返事をして相手を惑わすこともある。補聴器はン10万円出して精度の高いものを使用しているが、雑踏の中では相手の言葉が聞き取れず、返答に困る。私をよく知る人はトーンを上げて会話をしてくれるので通じ合えるが、少なからず周囲に迷惑をかけてつらい。

 幸い、目は両方とも良好なので眼鏡なしでも新聞が楽に読める。最近、気づいた。相手の口の動きで言葉の意味を判断し、何とか会話ができる方法を会得した。目は耳と二役をこなし、めまぐるしい日々を過ごしている。
  (2012.03.29 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2012年3月24日 (土)

「ほっかほかに」

       岩国市  会 員   山下 治子

 少し日和になったので、畑に出てみた。昨年暮れにネギを採って以来だ。けなげにタマネギとホウレンソウが寒さに立ち向かっている。その隣に分けてもらい、初めて植えたサトイモがる。教えてもらった霜よけのもみ殼と枯れ葉をどっさりかけている。

 そーっと掘ってみると土は黒々と水分を含み、さっくりと鍬を受け入れた。ごっつい親イモをたぐると子イモたちがごっそりついてきた。何と仲のいいこと。これが子で、これが孫、ひ孫ままでつないでいる。

今夜も寒い。夕飯はサトイモたっぷりの豚汁だ。温まるぞお。

2012.03.24 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2012年3月20日 (火)

「春の味?」

      岩国市  会 員   稲本 康代

 吹く風に、春が少しずつ近づいている。今朝、フキノトウを見つけた。丁寧に掘り起こして手にすると独特の香りが漂い、何だか心がウキウキしてきた。どうやって食べようかな。

 思案したが、最近知人に習った通り、まず熱湯にさっと通し、それから水に放して固く絞り、細かく刻む。しょうゆをかけ熱いご飯の上に載せて口に入れた。

 ほろ苦い味を通り越して、何と舌がしびれるような苦さである。その苦さは消えなかった。

 私の調理がまずいのか、フキノトウが腹を立てたのかは知らないが、期待はずれの春の味だった。  

  (2012.03.20 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2012年3月15日 (木)

「定位置」

       岩国市  会 員   貝 良枝 

 

壁掛け時計が遅れているのを忘れ、リズムが狂った。電池を替えようと時計を外した。時計はその位置にないのだが、つい見てしまう。「外したんだった」。代わりに目覚まし時計を出してみるが、視線はやはり壁に行く。

 父が元気だったころ「誰が使ったんか」とハサミや金づちなどが定位置にないことを怒られた。確かに、あるべき場所に物がなかったら、仕事の流れを切られたようでイラッとする。

 心の健康のためにすぐに電池を買いに行った。時計は元の位置で何事もなかったように静かに動きだした。

2012.03.15 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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2012年3月13日 (火)

「めん食い夫婦」

   山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 
私は面食いだ。祖母の「子供のために旦那さんは男前を選ぶように」という教えに従ったからだ。主人もめん食いだ。こちらは面ではなく、無類のメン好き人間だ。西原理恵子さんの「毎日かあさん」に11メンという言葉が出てきたが、まさにそれである。

 子供のころ食べたラーメンが、よっぽどおいしかったのだろうか。大人になった今も食べ続けている。それも必ず自分で作る。私の実家に行っても自分で作って食べるのにはあきれる。

 結婚30年。私の面食いは主人似の娘を2人産み、主人のメン食いは体重20㌔増のメタボ腹を生み出した。
 
  (2012.03.13 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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2012年3月12日 (月)

節電いつも心掛けて

  岩国市   会 員  片山 清勝

 大阪万博。その開会式で日本原子力発電(原電)敦賀1号機から送られた電気で会場の灯がともった。原子力の灯に、当時の日本人の多くが明るい大きな未来を夢見た。

 あれから40年余り、日本では初めて経験する原発事故が起き、電気エネルギー政策が大きく見直されている。電力の逼迫を解決し、日本再生のためにも結論が急がれる。

 電気の原点は水力発電。水の落下エネルギーを電気に変えていた「水車・発電機」が、山口・広島県境の小瀬川上流の湖面を見下ろす吹きさらしの建屋に置かれている。

 弥栄ダム建設に伴う発電所廃止を記念したという。

 子どものころ、家庭の電気使用量が超過するとヒューズが飛んで節電を強制された。いつのころからか、電気が思いのままに使える時世に変わった。

 ヒューズの時代へは戻れないが、いま節電社会が求められている。「それをいつも心掛けよう」。発電機を通り抜ける冷たい風がささやく。  

 2012年03月12日 中国新聞「広場」掲載

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2012年3月 6日 (火)

「スズメよスズメ」

      岩国市  会 員   吉岡 賢一

 
スズメがいない。チュンチュンの鳴き声さえ聞こえない。東側出窓下のブロックは毎年多くのアベックが、日向ぼっこしたり、お互いの羽づくろいをするデートスポットである。

 日当たりが良く、風は当たらない。餌もふんだんな畑が目の前。なのに今年は1羽も姿を見せない。スズメに限らずヒヨもツグミもやってこない。ごちそうのクロガネモチの実はいまだ手つかず。見慣れた小鳥たちがやってこないだけで、あれこれ取り越し苦労をしてしまう。元気なら早く姿を見せておくれ。みんなで一緒に春を待とうや。

 (2012.03.06 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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