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2012年5月

2012年5月31日 (木)

「1枚の写真」

       岩国市  会 員   片山 清勝

 

母の日、贈り物の代わりに遺影の額縁を拭く。ほほ笑んでいる顔から、あの時を思い出す。 

「写真部に入る」と高校入学式の日に息子が希望。初めてカメラを手にした第一声は「おばあちゃんを写す」だった。よそ行きの姿でうれしそうな母ヘポーズをつけながら、真剣に何回もシャッターを押していた。 

母はその中の1枚を大層気に入り「遺影はこれでお願い」と言う。軽い気持ちで聞き流していた。それから2年、その1枚は母の願い通りとなり、予知していたのかと驚いた。高3だった息子の目は潤んでいた。

存命なら今年は白寿の祝い。

2012.05.31 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2012年5月25日 (金)

「ぬかよろこび」

    岩国市  会 員   貝 良枝

 

夫が電車の中で1万円くれる。「奈良……」と言ったが人の声に混ざってよく聞こえない。「こんなところでくれなくても」と思ったが、奈良へ遊びに行く軍資金、ありかたく財布に入れる。
 
 これまでも遊びに行く時は、時々補てんをしてくれた。これでお昼は刺し身御膳か。うふっ。
 
 乗り換え駅の切符売り場に立ったら「さっきの1万円使えよ」。「切符ぐらい1万円を使わなくても」と思うが、機嫌のいい私は言う通りに。切符を買って振り返ると、夫は財布を開けて手を出している。そういうことか。私の手には小さな切符が1枚残った。

2012.05.25 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

 

 

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2012年5月24日 (木)

講習前夜の深酒反省

   岩国市  会 員   山本 一

 いつも通り朝6時に起床して「しまった」と思った。二日酔い気味だったからだ。一瞬背筋が寒くなった。

 前日は44回目の結婚記念日。ついうっかりして晩酌をすごしてしまった。「飲み過ぎた翌日の午前中は車に乗らない」と決めているが、当日は自動車運転免許高齢者講習日。もともと運転は得意ではない。

 「よりによって飲み過ぎるとは」と自分を責める。万一を考えて徒歩で出掛けた。

 午前9時すぎに受け付け開始。「昨夜少し晩酌がすぎたのですが・・・」と言いかけたら、受付の方が「酒気帯び検査はありませんよ」。途端、「この時間なら大丈夫」との確信に変わった。

 座学、視力検査、運転適性診断と続いた。実技は正午を過ぎてからだったが、診断結果を渡されてびっくり。「同年代より、やや優れている」 

 駄目な自分を叱りながら出掛け、結果オーライで帰宅した。それにしても講習を忘れて飲みすぎるとはドジである。

   (2012.05.24中国新聞「広場」掲載)

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2012年5月17日 (木)

「突然のことで………」

    岩国市  会 員   横山 恵子

 

「何の親孝行もせんうちに逝ってしもうて」と悲痛な声で弟は父の手や頭をなでた。

412日、不慮の事故と聞き、急ぎ病院へ到着した時は臨終間近。なぜ? 茫然自失。

翌日、湯灌し、化粧してもらった父の穏やかな顔に、皆救われる思いがした。たった1週間前、ひ孫のために植樹しながら「成長するのを見たいもんじゃが……」と言っていたのに。

76歳まで働き、何事も全力投球。背中で生き様を見せてくれた。父さんには到底及ばないけど、恩に報いるよう生きていくよ。ありがとう!! 母さんのことは心配しないでね。 

 (2012.05.17 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2012年5月15日 (火)

「隠し昧」

        岩国市  会 員   吉岡 賢一

 

みそ汁に浮かぶ青い小さな葉っぱ、この季節ならではの味わいが朝から元気をくれる。

そんな木の芽どきになると、我が家流の岩国寿司が何度となく食卓を飾る。私の母から受け継いだ伝統の味は十分クリアしていると思うのに、さらにひと工夫。風味豊かな木の芽を寿司の表面に散りばめ、旬の味に仕立て上げる。この味は隣近所にも喜んでもらっている。時には寿司がタケノコに化ける。タケノコが木の芽あえに姿を変える。

何十年変わらず作り続けるかみさん。「うまいね」だけでいいのだろうか、と時々……。

(2012.05.15 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2012年5月11日 (金)

「首を洗って待つ蘭」

     岩国市  会 員   山本 


 「何と長持ちするねえ! ひょっとしたら丸一年咲いたままだったりして」と妻に言う。しばらくして妻が「葉脈が切れている。造花み
い」と。何ということだ。  

この蘭は昨年10月、妻が手作りパン屋を開店したお祝いに頂いたものだ。たくさん頂いた鉢植えの中でも、とりわけ長持ちする花だと度々話題にした。妻は毎日水やりをし、大切に育てた。届け主には年賀状で「まだ咲いています」と書いて出したとか。

真実が分かった途端、お払い箱では可哀そう。それに、何だかバツが悪い。今も、鉢植えの仲間の中で首を洗って鎮座。

  (2012.05.11 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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「心のサプリ」今後も楽しみに

    岩国市  会 員   中村 美奈恵

 

日曜版に心療内科医の海原純子さんのコラム「心のサプリ」が復活したのがうれしい。以前、彼女の言葉に何度も救われたことがあり、今も切り抜きを保存している。
 34月はとても忙しかった。長男が大学卒業と就職に伴い転居し、三男は中学に入学した。仕事も忙しく、息が切れそうだった。そんなとき、ふと居間のピアノに向かおうという気になった。ほんの30分、一人きりで弾いたが、不思議なことに肩の荷がすうっと下りたような気がした。

手元にある切り抜きにこんな趣旨のことが書いてある。「人は誰でもパーソナルタイムがないとイライラしがちになる。一人の時間を持つと、自分の心と向き合えてほっとする。忙しい日が続いた後は、一人の時間も大切ですよ」

ピアノで自分を取り戻した私は、息子に穏やかに接することができた。大切なことに気付かせてくれたり、元気づけて前に進ませてくれる「心のサプリ」を今後も楽しみにしている。

2012.05.11 毎日新聞「みんなの広場」掲載)

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