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2012年7月

2012年7月31日 (火)

「夫の願い」

    山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 

ちょっと油断すると庭の草木は伸び放題。暇を見つけては夫が木を散髪している。ごろんとしていたら、イチジクの下の草引きの指令が出た。夫の大嫌いな蛇が出没するレッドゾーン。いやなら代わりに散髪するか、と言う。適当に木を切るだけなので簡単そう。でも脚立にへばりつくのは足が疲れそうだ。蛇との遭遇を選択した。
 草引きをしていると、枝越しに雨どいにツルが巻き付いているのを発見。気になったので力任せに引っ張ったら、雨どいがスポッと外れた。夫が叫んだ。「頼むから余計な事をして仕事を増やさないでくれ」
  (2012.07.31 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2012年7月24日 (火)

「遺 産」

    岩国市  会 員   吉岡 賢一  

 

熱いおかゆに熱いみそ汁。何十年も続いている我が家定番の朝ご飯。おふくろがおやじさんにずーっと作り続けてきた。引き継いだかみさんが今もその習慣を守ってくれている。風邪気味でも二日酔いでも、すーっと喉を通る。とたんに元気が出る。お陰で目下病気知らず。
 遺産らしきものはなかったが、おかゆとみそ汁という胃に優しい朝ご飯の習慣と、この健康体を残してくれた。ささやかなことではあるが、大きな遺産をもらったと心得よう。兄妹が争うほどの遺産をもらってもねー。あったらあったで邪魔にはしないだろうが。
 (2012.07.24 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2012年7月20日 (金)

「そうだったのね」

    岩国市  会 員   中村 美奈恵

 

「最近、揚げ物ばっかり」。鶏の空揚げを作っていると、中1の三男が言う。「うん、お兄ちゃんの好物だからね」
 1人暮らしをしている大学生の次男に送るため、喜びそうな料理を冷凍庫にストックしている。多めに作っては、夕食のおかずに回す。昨日のコロッケもそうだった。「家にいないお兄ちゃんのことばかり言っている」。おやつに「一つだけよ」と冷凍庫からドーナツを出したのも気に入らなかったらしい。

「ねぇねぇ、それってやきもち?」「うん」。思わぬ返事に、私の方がドキッとした。

(2012.07.20 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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黒島空襲 児童を悼む

    岩国市  会 員  中村 美奈恵

 岩国港からフェリーで40分、瀬戸内海に黒島(岩国市)はある。周囲4㌔のこの島で悲劇が起きたことを教えてくれたのはMさんだつた。

  1945年7月24日午前10時ごろ、低空飛行の米軍空母艦載機に異変を感じた小学生らは防空壕に逃げ込んだ。

 そこを爆撃、生き埋めになった。空襲を避けながらの救出作業は難航した。夜遅く運び出され学校に並ベられた子どもたちの遺体。その中に小2のMさんの弟もいた。

 「なぜ、こんな小さな島を…」。悲しさと無念さが痛いほど伝わった。もっと話を聞きたいが、Mさんは亡くなり、二度と聞くことができなくなった。

 心残りだった私は黒島を訪ねた。島の人に防空壕跡に建てられたという供養塔に案内してもらった。そばの石板には犠牲になった19人の名前が刻まれている。M さんの弟の名前もあった。

 一人一人のはかない命。海を望む供養塔の前で悲しい出来事を実感した。もうすぐ67回目の命日がくる。

  (2012.07.20 中国新聞「広場」掲載)

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2012年7月17日 (火)

プランター野菜 美味

   岩国市   会 員   片山 清勝

 プランター菜園3年目。 トマトにキュウリ、ビーマンなど丈夫そうな苗を選んで植えた。

 キユウリ、ピーマンの取りたては、ちょっと生臭いが、みずみずしさが伝わる。トマトはつやのある赤色に染まり、完熟のシグナルをくれる。ミニと小型の2種類、十数個取る日もある。

 トマトは冷蔵庫で冷やし、丸ごと食べるのが私の食べ方。市販のそれより少し皮が厚めだが、酸味と甘みが濃厚で、市販の味に勝っている。

 キュウリとピーマンは妻の料理に委ねる。時には棒状に切ったキュウリに好きなしょうがみそをつけて食べる。パリバリとした食感が爽やか。

 プランターでも成長は速い。倒れないように支柱を立てる。我流で見栄えはよくないが、よく伸びる。それに連れて収穫も増えるから楽しい。

 本格的になった節電の夏。色濃い自作の野菜で体力をつけ暑さを乗り越えたい。そんな願いを話し掛けながら水やりをしている。

  (2012.07.17 中国新聞「広場」掲載)

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2012年7月16日 (月)

根比べ

    岩国市   会 員  稲本 康代

 夕方、外が何やら騒々しい。見ると、おびただしい数のカラスが電線に止まっている。

 隣家の弟の畑へ慌てて走った。至る所でグリーンピースが食い荒らされていた。「これは大変」と思っても、どうしていいかわからず、畑の中に立っていた。

 この豆は、あと数日で収穫である。お裾分けにあずかる私にとっても貴重な豆である。ここは何としても守らなくてはならない。

 日頃カラスを見かけると「カラスなぜ鳴くの・・・」と口ずさむが、今日ばかりはそんな気になれない。

 「大事な豆を荒らすとは不届き者」と電線に向かって叫んだが、カラスは動かない。弟夫婦も帰宅しない。だんだん疲れてきた。

 「カラスよ、早くねぐらにお帰りください」

 そんな私の弱腰をあざ笑うかのようにカラスが鳴いた。「カア、カア」

 それを聞いて私は宣言した。「よしこうなったら、どっちが勝つか、根比べだ」

 その宣言がとどいたのか、やがて1羽、2羽と消えていった。全てがいなくなる頃には、薄暗くなっていた。

 やっと帰宅した弟夫婦に、カラス騒動の終始を話すと笑い転げた。私は性懲りもなく、お願いした。

 「豆をちょうだいよ」

    (2012.07.16 中国新聞「こだま」掲載)

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2012年7月 6日 (金)

「むつまじさ」

     岩国市  会 員   片山 清勝

 

錦帯橋そばの吉香公園に「美しき天然」の作曲者で岩国市出身、田中穂積の銅像がある。その前を通ると曲が流れ始める。
 
 年配の観光客の男性。右手で拍子を取り、リズムに合わせ体を左右にゆっくり振りながら聞いている。その姿は何かを回顧しているように見える。背後から連れ合いがその姿を撮っている。主人が何を思い出しているのかよく分かっている、そんな仕草を感じる。
 
 訪れた地で夫婦共有の思い出に出会えるとは素晴らしい。そんな目の前の温かな雰囲気に、穂積の海軍帽にひげの軍人顔が少しほほ笑んでいるように思えた。

2012.07.06 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2012年7月 4日 (水)

ユースホステル存続を願う

  岩国市 会 員  樽本 久美

地元、岩国のユースホステル(YH)が閉館となった。広島市のYHも閉館に追いやられそう、という報道もあった。何とかならないものかと思っている。私はかれこれ30年、「青春18きっぷ」を使って旅し、YHを利用してきた。独身のころは年8回はYHに泊まっていた。

YHは、宿泊者のミーティングがあって、旅の情報を教えてもらえるし、友違もできる。泊まったYHで押してもらったスタンプも私の宝物だ。活動的な性格になれたのは、きっとYHのおかげだ。

山口県下関市や長崎市など印象に残るYHは数多いが、特に広島県府中市のYHでは、「母」と慕われる経営者から、明るさや、優しい言葉遣い、「相手のことを思って行動する」など多くのことを教えてもらった。いろんなYHの利用者減のニュースを聞き、私も久しぶりにぶらっと泊まりに行ってみようと思った。

2012.07.04 朝日新聞「声」掲載)

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