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2012年11月

2012年11月30日 (金)

「成長と衰退の現実」

     岩国市  会 員   山本 

 

10カ月の孫が、よく見ないと見えないような小さなごみを持ってくる。「えっ これが見えるの」。どうやら目は確実に追い越されたらしい。まてまて、耳も私よりはるかによく聞こえるようだ、と思いめぐらす。

成長著しい孫。私は衰退の一途だ。次は五体のどこが抜かれるのだろうか。記憶力も既に負けているかもしれない。走るのもボール投げも、負けるのは時間の問題だ。

片言の孫に「20歳になったら一緒に飲もうね。じいちゃんの夢だよ」と言ってみる。こっくりとうなずく。その頃は、全てを追い抜かれた90歳越えか。

  (2012.11.30 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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「しあわせな距離」

   山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 

幸せな夫婦になるコツは、奥さんが趣味に没頭できる時間を確保し、会話を増やしつつ、さらに旅行や老後についてたくさん会話することだそうだ。   

「人が走るのを見て何楽しいの」とあきれられるくらい駅伝やマラソンの現地観戦が趣味の私。車の免許を持っていないので、必然主人と2人旅になる。 

先日、テレビに映った2人を見て義姉が「隣じゃなくて微妙に離れていた」と不思議がった。主人に言わせると、不安にならないくらいの距離だそうだ。早いもので結婚30周年。主人の距離の取り方が上手だったのだろう。老後もよろしくね。

 2012.11.30 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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平和学ぶ子 頼もしい

     岩国市  会 員   横山 恵子

 岩国
市内にある平田小6年生の日曜参観を見せてもらう機会があった。
 子どもたちは、語り部の人たちの話を聞いた後、広島市中区の原爆資料館、平和記念公園を訪問。帰って班に分かれ、平和新聞作りをしたとのこと。
 参観日当日、班ごとに前へ出て、新聞を黒板に張り、一人一人が自分の感じたことを発表した。
 発表では、被爆の実態に衝撃を受けたこと、世界に今もあるたくさんの核兵器のこと、被爆から10年後に自血病でなくなった佐木禎子さんへの思いなどが、ひしひしと伝ってきた。
 新間には平和を願う鶴の絵が描かれ、しっかりと握手した手と手の絵の下にはsmileとpeaceの文字。その発想に感心した。
 まさに、仲間同士の努力と絆の結晶のような平和新聞だ。日本の将来を担う子どもたちを頼もしく思い、元気と勇気をもらった。
  (2012.11.30 中国新聞「広場」掲載)
 

 

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2012年11月27日 (火)

「えさでつる」

  岩国市  会 員   山下 治子

 

人暮らしの息子の誕生日が近い。彼が出て行く時、「食いつめたら相談に乗る」と見送ったが、ウンもスンもなく、たまに戻るのは、パーマ嫌いの私の髪をカットしてくれる時。ビール付きでちょっと気張った夕食で代払いする。

20代最後の誕生日、注文は?」とメールすると「五体満足な体とナイスな顔で十分」との返信。数日後、「マグロの山かけ食いてェとメールがあり、続きに「いつもウルサイと思ってた。今はアリガトウと思ってる」とある。

男の子は、いつもこれ。たまには、面と向かって言ってみて。

 2012.11.27 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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2012年11月25日 (日)

「感謝してるよ」

       岩国市  会 員   横山 恵子

 

の一角にある畑。亡父は作る、私たちが食べる人った。田舎に住むおばに「弟子入りして畑仕事を教えてもらいたいくらいよ。大根等まいたけどできるじゃろうか」と言うと「(父が)よう耕していたから大丈夫いね」と励ましてくれた。

野菜等も少しずつ成長、いとしさが湧いてきた。親類のA君が「大根をすって食べたら、辛みの中に甘みがあった」と。皆が集まった時、皮付き大根ステーキを作った。「軟らかい」「おいしい」の言葉にヤッター。これも父が土づくりしたお陰。「今ごろわかったか」と父の笑い声が聞こえてきそうだ。

2012.11.25 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2012年11月22日 (木)

「しらたまの」

    岩国市  会 員   吉岡 賢一

 

酒のさかなになるおかずが並ぶと、うれしそうに冷や酒とおちょこをそろえチョコンと目の前に座る母。「あんたもおやりんか」と相手を求めてくる。晩酌の習慣が全くなかったその頃の私は、付き合うこともなかった。息子と酒を酌み交わすという、老いた母のささやかな楽しみを心ならずも奪っていた。

晩酌の心地よさを覚え、歯にしみとおる酒の味を楽しんでいる今、ちょこの向こうに母の笑顔が見え隠れ。「すまんかったね」と今更ながらわびの言葉が頭をよぎる。「遅いよ」などとは決して言わない母。間もなく祥月命日。

   (2012.11.22 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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2012年11月21日 (水)

教師目標 頑張る息子

    岩国市   会 員   中村 美奈恵

 けさ、園芸店の前を通り掛かると、青いジャージー姿の女子中学生が2人、ほうきで店の周りを掃いていた。職場体験だな。なんだか懐かしくなった。

 次男が中学2年のとき、幼稚園で職場体験をした。

 子ども好きな次男は保育士になるのが夢で、一緒に走り回ったことや抱っこして重かったことをうれしそうに話した。

 子どもたちに「せんせい」と呼ばれたと照れていた。

 大学3年になった次男は、特別支援学校小学部の教師を目指している。今秋、5週間にわたる教育実習が支援学校高等部であり、緊張の日々を過ごした。

 先日、実家に帰ってきたとき、作業実習で生徒が作ったという花瓶を見せて、「粘土をこねるところから始めたんよ」と得意そうに話した。

 本当に「先生」と呼ばれる日が来るのかな。ひたむきな中学生を見ながら、思いをはせた。

   (2012.11.21 中国新聞「広場」掲載)

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2012年11月15日 (木)

いちすけ号に父思う

    岩国市  会 員  片山 清勝

 「日本のエジソン」と呼ばれた岩国市出身の工学博士、藤岡市助は、その故郷に中国地方で最初の路面電車を走らせた。

 それは1909(明治42)年から現在のJR岩徳線開通までの20年間だった。この電車をモデルにしたレトロなバスが、岩国駅ー錦帯橋間で運行されている。

 市助の名前をとって「いちすけ号」と命名された。木製のシートや電車に似せた外観は、乗客をタイムスリップさせる。

 また錦帯橋近くの城下町通りでは、軒下すれすれに走るため、車窓からは趣のある古い町並みが楽しめる。

 そんな城下町を走るいちすけ号を撮っていた。すると運転手が右手を上げて軽く頭を下げあいさつしてくれた。

 観光を大きな旗印にする市にとっていちすけ号は大きな存在。その乗務員のちょっとした心遣いが観光客の心象をよくする。

 電車運行開始の年は父の生まれ年。運転手があいさつをくれた日は父の命日だった。偶然ではあったが、きもちよい一日を過ごせた。

   (2012.11.15 中国新聞「広場」掲載)

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2012年11月 6日 (火)

「音色」

    岩国市  会 員   樽本 久美

 

広島港から宮島を巡るランチクルーズが当たった。快晴で絶好のクルーズ日和。船内で珍しい物を発見した。手動式のオルゴールで、100年前のアメリカのレジーナフォン。「椰子の実」や「おぼろ月夜」「ハッピーバースデー」などを聴かせてくれた。重厚な温かみのある音色だ

この夏、忙しかった私。神様がご褒美をくれたのかな? のんびり、ゆったり、食事をいただいた。デッキの風もやさしく、ゆるやかな時聞か流れた。今まで聴いたオルゴールの中で最高の音色で、何だか100歳まで生きられそうな気持ちになった。

 2012.11.06 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2012年11月 5日 (月)

「図書館のおかげで毎日充実」

   山陽小野田市  会 員   河村 仁美


 

「今日、図書館行く?」というのが、休日の朝の娘との会話だ。私の家族は無料でいろんな本が読める図書館が大好きだ。

 ずぼらな母は読み聞かせをするわけでもなく、ただ娘の隣で自分の好きな本を読み続けた。そんな母を見ていた娘は、同じように本を読む習慣がつき、読書好きに育った。

 本を読みたいけれど時間がないと言う人がいる。私は、たとえ十㌻しか読めなくても心を休ませてあげる時間をひねり出す。ベッドに寝転がって本を読む。好きな読書をすると疲労やストレスが軽減され元気をもらえる。

 最近は予約システムを利用する頻度がふえた。「この本は他の図書館から借りた本です。大事に取り扱って、返却期日を必ず守ってください」裏を見たら岡山県立図書館と書いてある。県外の図書館からも本を借りられるシステムに感激した。

 秋の夜長は読書に最適。読書は「心の栄養剤」と本を開ける。もちろん図書館の本だ。自分の時間があるお陰で毎日が充実したものになっている。

 2012.11.04 朝日新聞「声」掲載)

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2012年11月 4日 (日)

「母親の選択」

  岩国市  会 員   安西 詩代

 

2匹が戯れてボールのように転がってゆく。友人の倉庫で4匹の子猫を産んだ野良の母猫は、2匹を人の目につく所に運び、2匹は手元に置いた。4匹を育てるのは無理だと悟り「2匹一緒なら寂しくないだろう。可愛がってください」とばかりに友人に託した。
 
 数年開、私に懐いていた野良猫が3匹の子猫を産み、そのうちの1匹を飼おうと家に入れた。母猫は家の周りを「ミャオー、ミャオー」と必死に大声で呼ぶ。それに呼応して子猫も「ニャオニャオ」と力いっぱい鳴く。とうとう私は諦めた。今は両方の母猫の心が分かる。

2012.11.04 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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山口国体が結んだ縁

   岩国市  会 員  山下 治子

 初物のレンコンを届けてくれたのは、昨年の山口国体で知り合い、活動を共にした仲間の一人だった。

 今年の岐阜国体で、山口県は15位だったが、昨年は悲願の優勝を勝ち取るために、山口県全体が燃えた。

 地元ではカヌー競技が催され、私は地域の主婦たちと、選手の食事作りを担当した。初対面の人が多く、不安だらけのスタートだったが、わが子のような選手たちのためにと、母心を持っての集団行動で心意気が高まった。

 選手たちと燃えた10日間を昨日のように思い出し、話が弾んだ。会場となったダム湖を仲間と訪れて、今は静かな湖面を眺めた。

 「この年で、友達が増えたのがうれしいね」と彼女が言った。言わずもがな、私もうなずいた。

 頂いたレンコンは、選手たちに「ぶち好評」だったレンコンカレーにして、夕食の膳に載せた。1年ぶりの懐かしい味だった。

  (2012.11.04 中国新聞「広場」掲載)

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2012年11月 2日 (金)

「秋の味」

   岩国市  会 員   片山 清勝

 「行きましょうか」と看護師は車椅子を押し始めた。突然、これまで思いもしなかった、「万一の時残る妻はどうなる」との不安が頭をよる。でも、顔には出ないように繕った。手術室の扉が開く。主治医のきりっとした顔が見えた。がん切除への不安が消える。
 
 あの日から1年、内視鏡にCT、血液など検査結果は「異常ありません」と笑顔で主治医。緊張が解け体が軽くなる。そばの妻もホッとした息遣い。
 
 
病院の外は秋日和、思ったわけでもないのに、背伸びに続いて深呼吸も。爽やかな秋の気配を「うまい」と感じた。
   
2012.11.02 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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