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2013年2月

2013年2月27日 (水)

朝市当番楽しみ18年

   岩国市   会 員   森重 和枝 

 早朝、霜で白く光る道を、ライトをつけて走る。今日は、ふれあい朝市の当番だ。
 寒さの厳しい日は、並ベた大根がしみるほど冷える所だが、18年もやっている。     
 毎週土日の7時半〜11時に開く。台風や、大雪の日でも、やっていて、朝取り新鮮野菜の百円市なので、リピーターも多く、開店前にはいっばいになる。
 当番は「あと5分待ってください」「籠には入れないでください」などと声掛けし、早い者勝ちにならないように、お客さんに待ってもらうのが大変なくらいだ。
 スタートから20分間は、おしゃべりする暇もない。冬野菜は大根、白菜など重たい物が多く、結構肉体労働だ。
 一段落したら、「一体みしようかね」と、手作りのぜんざいが出る。いつも持ってきてくれる人がいるので、私は朝食抜きで行く。持ち寄りのおやつを食べながら、野菜作りのこつや、新しい料理を習ったりする。月1回の当番におまけがいっばいあって、楽しんでいる。 
 

  (2013,02,27 中国新聞「広場」掲載)

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2013年2月26日 (火)

「冬のストレス」 

    岩国市  会 員   山本 一

 「あっ また間違えた」。いらいらが頂点に違する。パソコンが思うように打てない。右手親指と人さし指の保護テープが邪魔をするのだ。寒さも本番になる師走から3月ごろまで、毎年のことである。原因は四季を問わず、毎週回は必ず行く海釣り。釣り用の手袋は指先がない。釣った魚の処理を素手で行う。主にこの2点で手指がつき、あかぎれになる。
 
 1本指でった操作が、懸命に練習して何とか10本指でになった。また1本指に戻るのは嫌だ。さりとて10本指ではたちまち誤入力。楽しいはずのパソコンでストレスがたまる。

2013.02.26 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2013年2月22日 (金)

「見えないこと」

       岩国市  会 員   片山 清勝

 

偶然出会った知り合いの男3人。近況を語る中、「Oからの賀状が来ない」と心配する思いが、なぜか共通していた。Oは80歳代の女性。Oと3人それぞれの関わりに共通性はない。3人の中で一番若いYが、Oに連絡を取ることを決めた。
 ところがその日、Yが電話する前にOから「ふせていたが元気になりました」と掛かってきた。その驚きがメールで届いた。読む私も驚く。まるで3人の会話が聞こえたかのようなタイミング。言葉では表しきれない、心を伝える不思議な媒介が科学を超えて存在した。その謎は誰も明かせない。

 (2013.02.22 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2013年2月20日 (水)

「祝97歳 ケーキに笑顔」

        岩国市  会 員   森重 和枝 

 姑が97歳の誕生日を迎え、自宅でお祝いをすることにした。11年前に脳梗塞で倒れてから車椅子生活となり、耳も遠くなった姑は、1年前から自宅を離れ、近くの老人保健施設で暮らしている。家族皆で姑を元気づけたくて、施設から一時帰宅の許可をもらった。
 
せっかくなら盛大にやろうと、近所の菓子店で生クリームたっぷりのホールケーキを特注した。ケーキの上にはイチゴをたくさん載せ、「祝九十七歳」のメッセージを添えた板チョコもあしらってもらった。

そして当日。帰宅した姑はケーキを見て大はしゃぎ。「百に近いのう」と笑顔で、切り分けられたケーキを□いっぱいにほおぱり「おいしい」を連発した。   

こんなに喜んでもらえるなんて、誕生会を開いて本当によかった。来年はもっと大きなケーキにしたい。

  (2013.02.20 朝日新聞「私の日記から」掲載)

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2013年2月19日 (火)

「ま、いいか」

        岩国市  会 員   吉岡

 「流し台前のマットを剥がしたら床がこんなに汚れている。どうしたらいい」 めったによこさない息子からたまに入るメールは、うす汚れた床の写真付
 
「どうせこんなことよ」と愚痴の一つもこぼしながら、「重曹水をタオルにしませてね、ああしてね、こうしてね」。電話で丁寧な解説が続く。
 
所帯を持ってはいても、まだまだ未熟な若夫婦にとって、母親とは生活百科事典のように頼りにされ、重宝される存在のようだ。
  それよりも、もっと幅広い知識の「生き字引」を自称する父親には、なかなか声もかからん。

2013.02.19 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2013年2月10日 (日)

「まだあった!」

        岩国市  会 員   山下 治子

久しぶりに出かけた街は、夫が大学、息子は高校時代を過ごした父子それぞれの青春の地だ。
 
 「あっ、あの店、まだあるんだ。あそこの定食は盛りがよくて安くて、学生に人気があったんだ」

そう言って夫は車のスピードを緩めた。

「行ってみようよ」と言う私に、夫は「食べ切れんぞ」。通り過ぎた車はUタ―ンし、近くの書店に止めた。

間口が挟く、だだっ広い店内の真ん中に石油ストーブが1台。レジもない。店主は代替わりしながらも、学生たちのためにと何十年も店が守り続けられていることに、夫は感傷的になっていた。

壁に貼られた守り札のようなメニューから、夫は空揚げ定食を頼んだ。出てきたのは、これで採算が合うのかと思うほどの量の鶏と生野菜、そして超特盛りのどんぶり飯。あきれて笑いが止まらない。単品注文の私はほっとしたが、夫は昔のようにはいかないようだった。

近隣の店ならランチ一人分でお釣りがきそうなお勘定を払うと「OB?」と聞かれた。「はい、主人が」と答えると、釣り銭と一緒に駄菓子を両手いっぱいにくれた。

女子大生ならずとも大喜びの私。入れ違いにネクタイをきっちり締めた男性が2人入ってきた。大学の関係者か、夫のようなOBだろうか。迷わず定食を注文していた。

  (2013.02.10 毎日新聞「女の気持ち」掲載)

 

 

 
 

 
 

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2013年2月 4日 (月)

「ひとり占い」

         岩国市  会 員   山下 治子

 
お年玉付き年賀はがきの当選番号が発表された。いくらもない枚数だが、切手シートは必ず当たっていた。過去最高の景品は携帯ラジオ。最近では「郷土の特産品」で、牛肉を頂いた記憶がある。
 
 期待を込め、年賀状の数字を見る。見落としたか、と再度はがきを確かめる。無い、1枚も無い。こんなこと初めてだ。ということは今年はツキが薄い年なのだ、と決めつけた。
 
 数日後、訪れた友人が「ごめん、出しそびれた」。更の年賀はがきを手渡された。「当たっているよ、4等だけどね」。よかった、今年もいい年なんだ。

   (2013.02.04 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2013年2月 3日 (日)

「節分のまじない」

    岩国市  会 員   片山 清勝

 

節分の夜、誰にも見られず、四辻の真ん中に年の数だけ豆を置くと願いがかなう―子どものころ祖母から聞いた節分のまじない。
 
 そのころ住んでいた集落には四辻が1力所あった。節分翌日の朝、路上には願いが込められた包みが幾つも置かれていた。包みを踏まないように学校へ行った。それは、戦後の社会混乱がようやく落ち着きを見せ始めたころ。それでも復興と生活のため大人は必死に働いていたことを、子ども心にも記憶している。 
 
 当時どんな願いを四辻に託したのだろうか。平和な世界や豊富な食料を、子どもらの健康と幸せをなどで、贅沢さや華やかさを願うものはなかったと思う。  

節分の豆まきは今も家庭で続くが、有名人を招いての観光化された光景も目立つ。恵方巻きを食べるなど昔とは大きく様変わりした。そんな中でも辻願いが生きている。

引っ越してきたわが家の前の小さな辻。初めてのときは10個あまりの包みが置いてあり、昔ながらの願い掛けをする人のいることに驚きながらも、何かほっとした。それからは毎年、夜明けを待ってドアを開け、数える。その数は次第に減っていき「掛けた願いがかなったから」と思うようにしてきた。そして、昨年はとうとう一つになった。

さて今年の節分明けはどうなるか。皆さんの願いがかなっていることを祈りながら、ドアを開けよう。

   (2013.02.03 毎日新聞「男の気持ち」掲載)

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2013年2月 1日 (金)

「笑顔配達人」

    岩国市  会 員   貝 良枝

 駄菓子屋で金平糖やラムネ菓子を買う。「あの人はどんなのが好きかな? あの人は……」と考えながら20個余りを選ぶのは楽しかった。
 家に帰り、菓子一つ一つにひもをつけ、大きな袋に忍ばせる。今週末にあるエッセーの会の会合で福引をしよう。ひもを引っ張って、小さな「福」を引き寄せてもらおう。みんな、どんな顔になるかな。好みのお菓子が当たるといいな。一芸はできないが、今年もみんなに笑顔を配達できることを考えよう。
 どんな手順で始めようか。盛り上がる方法を思いつき、ニヤリ。

     (2013.02.01 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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「福は内」

 

    山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 店先に並ぶ節分グッズを見ながら実家の節分を思い出した。父の豆まきは掛け声が独特だ。
 
「福は内、福は内、鬼は外」。
 「福は内」は大きな声で思いっきり豆をまく。「鬼は外」は小さな声で、まき方も控えめ。聞いたことはないが、鬼を追い出すよりも福を呼び込みたかったのだろうか。
 そんな父の中に鬼は居場所を見つけた。肺気腫という鬼は居心地がいいのか、出て行く気配がない。それでも父は楽しそうだ。そばにいる母が福を呼び込むからだろう。我が家にも福が来るといいな。今年は父のまねをして豆まきをしてみよう。

    (2013.02.01 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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