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2013年8月

2013年8月26日 (月)

「暑い日」

   岩国市  会 員   片山 清勝

 

暑き日が来ると思い出す。世界で初めて原爆が投下された日、父は命ぜられて、岩国から広島へ自転車で向かった。
 核兵器とは知らぬまま、直後の惨状を目にしただろう。その様子を聞こうとすると顔をしかめる。話すことがつらい、その表情から読み取れた。ただ、一つ残してくれた話。「人も犬も馬も、頭から防火用水槽につかっていた」。被爆された人は、水を求めながら亡くなったと聞く。残してくれた話はその一コマだろう。
 父は50代半ばで急逝した。葬儀の日、とても暑い日だったのは偶然だろうか。
  (2013.08.26 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2013年8月19日 (月)

「宝 物」

   岩国市  会 員   樽本 久美

 

今月の川柳の課題が「宝」。なかなかいい句ができない。主人に「我が家の宝物は何?」と聞いてみたら「おまえ」と。「そんなばかな?」と言いながらも、 少しうれしい私。「そうだ」。一句浮かんだ。
 住む家があり、今のところ健康で好きな仕事をして、趣味もたくさんある。「ありがたや、ありがたや」。この幸せを忘れないように毎日を暮らしていかなくては、ばちがあたるな。よく見ると、私の周りにはたくさんの宝物を持っている人がいる。ハーモニカ、フルートやアコディオンが弾ける人。笑顔のすてきな人。みんな私の宝物。

  (2013.08.19 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2013年8月16日 (金)

庭の畑に茂る青ジソ

    岩国市   会 員   山本 一

 庭の一角に約5坪の畑がある。その内の畳1枚ほどのスペースに、毎年青ジソが生い茂る。
 10年前に当地に越して来てすぐに青ジソの種をまいた。以来、毎年何もしなくても5月になると畑全体に芽が出てくる。
 ところが1度だけ、わずか3本しか芽が出なかった年があった。秋になって早々に全てを撤去し、他の野菜に場所を空けたことで、こぼれる実がなくて、翌年の発芽に備えることができなかったのだろう。
 その年はこの3本を大切に育て、実の自然落下を待った。おかげで翌年からは、再び畑一面に芽が出た。
 私は毎週釣りに行く。夕方には帰宅し、釣った魚で晩酌をするのが楽しみである。その時の手巻きずしに、このシソがなくてはならない。
 最近、母が亡くなり、また連日の猛暑もあり、釣りに行くのをちゅうちよしている。青ジソは、もつばら虫の餌となっている。

   (2013.08.16 中国新聞「広場」掲載)

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2013年8月14日 (水)

「消せぬ記憶」

      岩国市  会 員   横山 恵子

 

恒例の錦帯橋花火大会。朝からすし等作り大忙し。昼ごろから妹夫婦たちが次々とやってきた。にぎやかな夕食後、歩いて花火見物に出かけた。近くの橋はもう人、人、人。夜空に七色の星、大輪の花が咲く。
 「ドドーン」という音は、例年にも増して胸に悲しく響いた。それは昨年、父亡き後の花火大会の日。「そういえば父さん、花火を見に行ったことなかったね」と言うと、母のいとこが「それはね、花火は手榴弾の音に似とるんと。それを聞くと思い出すから……」と。花火見物できる幸せは、戦争の犠牲の上にあることを忘れまじ。 

  (2013.08.14 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2013年8月 9日 (金)

「どっちもどっち?」

      岩国市  会 員   山本 一

 

「今度ね」と知人から誘いの電話。駄目と分かったら話を途中で遮り、素早く断る。うそも方便。これも苦手だ。いずれも、相手に対する思いやりのつもりなのだが。
 ところが妻は違う。とにかく相手にいろいろとしゃべらせる。お互い話し疲れた頃になって「実は駄目なの」とやっとの思いで断る。そういえば、趣味のパンを作っている最中の電話でも「今、手が離せない」とは絶対言わない。「今、大丈夫よ」とうそを言う。結果、パンの出来損ないが私の食卓にのぽる。
 妻と私とどちらが人の道なのか、まだ結論が出ない。

  (2013.08.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

     

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2013年8月 7日 (水)

「手作りかしわ餅 故郷の山の香り」

      岩国市  会 員   横山 恵子

 

毎年夏になると、叔母夫婦が田舎から送ってくれた手作りの餅粉で、かしわ餅を作っている。かしわの葉は、家の裏にある線路の斜面から取ってくる。
 餅粉とお湯を混ぜて耳たぶくらいの硬さに練り、適度な大きさにちぎる。それで手作りあんを包んで、1520分蒸す。このとき、葉を蒸し器に入れておくと、やがて心地いい香りがしてくる。
 私にとって、それは山あいの故郷の香りそのものだ。亡き祖母も、私にかしわ餅を作ってくれた。なつかしい山々や、レンゲ畑を走ったり川で泳いだりした幼いころの思い出もよみがえってくる。 
 先日孫たちと一緒に葉を摘んで餅を作ったら、喜んで食べてくれた。大人になったとき、かしわ餅を思い出してくれたらうれしい。

   (2013.08.07 読売新聞「気流」掲載)

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2013年8月 6日 (火)

「8月、鎮魂歌」

        岩国市  会 員   吉岡 賢一

  

若い頃、田舎相撲で大関を張ったこともある元気印。健康に対して自信過剰の上医者嫌い。そんな父が「夏風邪を引いたようだ」と珍しく弱音を吐いた。半分けんか腰で病院行きを勧めたが、頑として聞かない。食欲は落ちる一方。サイコロ状のスイカを口に押し込んで水分補給させる容体に、鳥肌の立つ危機感を覚えた。明朝緊急入院の手はずを整えたその夜、我が意を貫いたまま74歳の生涯を閉じた。発症から7日目、悔いの残る見送りとなった。

 あれから40年を経た今も8月が来ると、息子としての責任を果たし得たのか、複雑な思いが胸に迫る。  

  (2013.08.06 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2013年8月 5日 (月)

「しめしめ………」

     岩国市  会 員   安西 詩代

 

 「もしもし、お父さんと代わってください」。嫁の電話は、近ごろはいつも夫にかかる。
 2入とも高校時代は陸上部たったそうだ。孫が今春より陸上部に入り、2人は若い頃に戻った。年賀状に「お父さんと私とで1年間、息子を見守っていきましょう!」と書いてあり、夫もまんざらでもない顔をしていた。今まで嫁の電話は子育てや料理方法と、私にしか用事がなかった。しかし、今は陸上の話で夫にしか通じない。

「お父さんを残して逝かないでくださいよ!」と言っていた嫁だが、この調子なら大丈夫そう。気楽になった。

  (2013.08.05 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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