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2013年11月

2013年11月26日 (火)

「ありがとう」

      岩国市   会 員   林 治子

 

エッセーが新聞に載った。追いかけるようにはがきが届く。思いもかけない人からだった。掲載作品の批評。書くことに一生懸命で読む人の立場に立つ余裕がない私。ここはこんなふうにいい、こんなように感じたと克明に書かれている。読みながら、書いた私以上に感じ取ってくださったのには、とても感動した。 
 その日は余りのうれしさに何度も何度も読み返し、とうとうはがきを抱いて寝てしまった。幼い頃にもこのような経験をしたことを思い出す。そのうえ、私の健康をも気遣う心配り。ありがとう。これからも友と呼ばせてください。
  (2013.11.26 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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2013年11月24日 (日)

「7年目」

        岩国市  会 員   山下 治子

 

年賀はがきが発売されると舞い込み始める薄墨色のあいさつ状。それは、内緒で逝ってしまった親友を思い起こさせる。
 彼女が緊急で入院した時、私も骨折で入院していた。水戸までは遠く、見舞いに行けぬもどかしさに、手紙を書き携帯電話を鳴らし続けたが、音沙汰はない。やっと、息子さんから「必ず元気になりますから」とし連絡があり、朗報を信じて待った。が、ついの便りが年賀欠礼とは……。無念で悲しすぎた。
 いまだ消せぬ携帯番号をなぞると、無情の響き。でも、いつか天国につながる気がして。

  (2013.11.23 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2013年11月22日 (金)

「心配ご無用」

       岩国市  会 員   山本 一

 

長かった親4人の介護が終わった。不謹慎だが、これで遠出もできると内心秋が楽しみだった。11月は趣味や会合の予定が満載。
 こんな時、1カ月前から始まった膝痛がひどくなった。残念だが、久々の大阪行きをやめる。週1の釣りも中断。一転、憂鬱な秋となる。「注射をしますか」との医師の言葉に、すがる思いで「はい」。翌朝は一気に改善。ルンルン気分で家中の窓掃除、その翌日は釣りに行った。
 が、3日目には再び痛みが戻る。「お父さんは先が心配だね」と、娘が暗い顔で妻にささやいている。冗談じゃない。絶対に治すぞ。

2013.11.22 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2013年11月19日 (火)

菜園作れぬ福島悲し

    岩国市  会 員  横山 恵子

 9月にまいた大根が、少しずつ大きくなつてきた。1㍉くらいの種が土の栄養分を吸収して成長する。自然の営みに感謝だ。
 わが家の畑で安全安心の野菜作りができることは当たり前と思っていたが、福島では、除染は終了して帰宅はできるが畑は作れないと、途方にくれている人がテレビに映し出されていた。
 その胸中を思うと言葉がない。原発事故を想定した避難訓練が今もあるが、もしものときがあればその後をどうするのか。福島では今も15万人もの人たちが、不安を抱えながら避難生活を送っておられるではないか。
 汚染水問題は解決のめどさえ立たない。核廃棄物処理場や、廃炉完了まで30〜40年かかるなど、とてもコントロールできるとは思えない。
 日本は地震国である。台風、竜巻も考えると、原発は造るべきではないと思う。ひとたび事故が起きると、自国だけの問題ではなくなる。何よりも、もう二度と住めないような土地を子どもたちに残してはならないと思う。 

    (2013.11.19 中国新聞「広場」掲載)

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2013年11月18日 (月)

「ラッキーな1週間」

        岩国市  会 員   中村 美奈恵

 

うーん。日曜の夕方、米びつを見ながらうなっていた。頼んでおいた新米を土曜に取りに行く。足りるかなあ。息子は給食だが、夫と私は弁当がいる。どうもあやしい。でも買いたくない。水曜は麺類にしよう。

そんな時、義母からちらしずしが届いた。ラッキー。月曜、友人からお土産にサバずしをもらう。わぁ。火曜、夫が出張で弁当はいらないという。ウフフ。木曜、開店したばかりの弁当屋が職場に来て「試食してください」。金曜、弁当を試食。みそ汁付きでおいしい。迎えた土曜。無事新米にありつけたのは「みなさんのおかけです」。

2013.11.19 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2013年11月13日 (水)

「スクスクぶくぶく」

      山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 

妊娠5ヵ月の長女が10日ほど帰省した。いつもは夫婦2人だけなので質素な食卓だが、妊婦が加わり品数が増えてちょっぴり豪華。会話もはずんでにぎやかなお食事タイムとなり、おなかも心も満腹で過ごした。
 実家でのんびり過ごし、検診に行った娘から「1カ月で4㌔増えたから、カロリー制限になってしまった」とメール。「え~、私も同じものを食べた」と思った時は既に遅し。娘の増えた体重は赤ちゃんの命の重さ。命を守るための栄養でスクスク育ったおなか。私はぶくぶくと脂肪たっぷりのおなか。スクスクぶくぶく、えらい違いだ。

2013.11.13 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2013年11月 9日 (土)

「大工になった元同僚」

岩国市  会 員   片山 清勝

 

近くで棟上げがあった。棟梁は、大工仕事に魅了されて脱サラしたかつての同僚。建築を1から学ぶため大工に弟子入りし、学校にも通うこと6年。1級建築士の資格を得て、一人親方として独立した。
 家が寿命を迎えて解体された時、材料が土に返れる木の家を作ることに彼はこだわっている。そのため完成には手間も時間もかかるという。
 材木市場へ足を運び、納得した木材を購入し、自然乾燥させて使用する。準備した木に墨付けをし、ノコやノミ、カンナなど昔ながらの大工道具を使う。プレカットの普及にともない、最近は墨付け、刻みの仕事が少ない。これができて大工は一人前というこだわりも彼は持っている。 
 今回手がけた家も「軸組模型」を作り、刻んだ材を仮に組む「地組」をし、墨付けや刻みに齟齬のないことを確認したという。また、古民家から出た松などの古材丸太を使っている。その質感、あめ色の艶と重量感は白い新材を引きまとめる力強さがある。
 棟梁こだわりの家を見学した時のこと。玄関を入ったとき、新建材を使わない家に違和感を感じた。しかし玄関を出る時に、室内の空気の柔らかさからか、穏やかな気分になっていた。
 奥さんも元同僚。「よくここまでやってこれました」と棟の主人を見上げながら感慨深げに語る。二人の今日までを知っているだけに心からエールを送った。

  (2013.11.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2013年11月 8日 (金)

「秋の夜長」

       岩国市  会 員   吉岡 賢一

 夕食の終わったテーブルにゴロゴロっと大粒のクリを広げ、包丁片手に鬼皮をむき始める。持ち掛ける世間話に適当な相づちを打ちながらテレビを見ている私に「おとうさんはええねー、うまいうまいと言って食べる役割ばかりで」と言う。渋皮煮を作るクリの鬼皮むきを手伝えという催促か?
 今までやったこともない上に「渋皮に少しでも傷つけたら、もうダメなんよ」と何度も聞かされてきた。それほど難しい鬼皮むきだが「よーし俺だって」。
 孫用の小さな包丁を持ち出し、初挑戦。妻が10個むく間に3個もむいた。褒められた。

   (2013.11.08 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2013年11月 7日 (木)

「秋の駐車場で」

     岩国市  会 員   山下 治子

 

5%引きでポイント2倍のスーパーの駐車場は、祝日と重なりどこも満杯。やっとこさ駐車すると、メモしてきた買い物を足早に済ませたが、レジも長蛇の列。やれやれと駐車場に戻り、はて、車はどこだ。
 確かこの辺り……とカートを引いて歩き回り、ようやく「あった」とキーを開けようとするのだが、なぜか開かない。秋とは思えぬ炎天下に汗が噴き出し、いら立っていると声をかけられた。
 「どうかしました?」
 「キーが開かなくて」 
 「これ、私の車ですよ。お宅のはそっちでしょ」
 怒り□調でけげんな目をされた。言われてみれば、左隣に色も型も同じ車が並んでいる。
 「おばちゃんもニンチなの?」 
 傍らの女の子の一言に、慌てて口をふさぐと「すみません、失礼言って。母がそれなもんで」とため息まじりに頭を下げられた。
 「おばあちゃん、おうち忘れちゃうの。すぐ迷子になるの」
 女の子のおしゃべりはあどけないが、介護する者の苦労はいかばかりかと「おつらいでしょうね」と言うと、女性は涙ぐまれた。
 車とおうちは違うが、女の子には同じに思えたのだろう。まだ大丈夫と我を張っても老化は否めない。先日、介護保険者証も送られてきた。
 「今日が一番若い日」と心して、人生の秋の味覚を味わっていこう。
  (2013.11.07 毎日新聞「女の気持ち」掲載)

 

 

 

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2013年11月 6日 (水)

厳しい経営、身近に感じる

   岩国市  会 員  片山 清勝

 円安以降、ガソリン価格は高止まりしている。そんな中、行きつけのガソリンスタンド(GS )に「スタッフ給油を廃止します」という掲示が出た。給油機周りに従業員の姿はなく、元気なあいさつの声が消えた。
 アベノミクスで「デフレ脱却、経済が上向いた」といわれるが、地方に住む年金生活ではその実感が伝わるものはまだない。逆に食品を中心に日用品の値上がりに不安を感じている。
 一方、中小企業の厳しい経営状況は報道で知る。行きつけのGS で、顧客へのサービス低下、さらに顧客減につながりかねない策をとる経営者の苦悩は、はたから推し量る以上に厳しい決断だったろう。低燃費車の普及、若者の車離れなど、GS業界への追い風は見当たらない。
 サービスポイントの入力に事務所へ入った。これまでと変わらぬ気持ち良い応対にほっとして、店を後にした。

    (2013.11.06 朝日新聞「声」掲載)

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2013年11月 4日 (月)

「支えられながら」

     岩国市  会 員   横山 恵子

 振り返ると山あり谷あり、いろいろあった。まさかという衝撃も。早くに両親を亡くした元同僚の「この世は修行するためにある」という言葉は心に染みた。夫は手すりを持って、やっと歩ける状態。案じつつも、聖人君子の介護とはいかない。周りの支えと励ましで元気をもらい、また頑張れる。
 夜半に夫の起きる気配で目が覚めた。明かりをつけ、トイレの介助。雨音がしていたが、やんだかなと戸を開ける。少しでも夫の癒やしになれば、と植えた花。白、ピンク、赤色の日々草が暗闇に浮かぶ。励ましてくれているのか。
 
 (2013.11.04 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

 

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2013年11月 2日 (土)

「ドライフルーツ」

    岩国市  会 員   片山 清勝

 

「よいしょ」。年配の女性が軒下につるし柿を掛けようと、脚立に上がるところに出くわす。ざるには2締め残っている。出しゃばりかと思いながら、手渡した。「どうもありがとうございました」と言いながら、なれた様子で脚立から下りる。皮むき跡の美しさに驚き秘訣を聞くと、結婚から50年以上の経験という。渋みが抜け、手作りの思いがこもったトロリとした中身、それは家族を喜ばせてきたのだろう。
 「孫が、私の作ったのはただの柿ではなく日本一のドライフルーツ、と喜んでくれます」。話すその笑顔が秋の日に染まる。

 (2013.11.02 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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