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2014年6月

2014年6月29日 (日)

「不埒な親だが」 

  岩国市  会 員   沖 義照

 
散歩の途中お茶屋さんの前を通りかかると、店の奥さんが脚立の上に立っていた。羽根の生えそろっていない4羽のツバメのヒナに、竹串でエサをやっている。孵化して間もなくメスはやって来なくなり、オスは電線に止まって他人事のようにただ見ているだけ。見かねて親に代わって1時間ごとにエサをやっているという。数日前からオスは違うメスと飛び回っていると笑って話す。身近なツバメの世界にも不倫とか育児放棄などがあるのだろうか。このオスは無責任な奴だと思ったが、人間だって同じようなことをする輩もいる。笑ってばかりおられない。

2014.06.29毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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2014年6月26日 (木)

ホタルの思い出遠く

     岩国市  会 員   角 智之

 
薫風を受けて新緑も色濃くなる頃、初夏の風物詩、ホタルたちの出番となる。
 
 たそがれ時に川辺の草むらに目をやると、鈍い光を放ちながら飛び立つタイミングをうかがっているようだ。初めは思い思いに光っているが、やがて一つのグループとなって乱舞する。 
 
 子どもの頃、近所の友達と夢中で追い掛けた記憶がある。走りながら狙いを定め、竹ぽうきを振り上げると、いきなり光を消して高く舞い上がる様子が月明かりに見えた。小さな虫でさえ、身を守るすべを心得ているのに驚いた。今では見ない光景となった。
 
 コンクリート護岸工事で隠れ場となる雑草が少なくなったのと、上流のダム工事で川底に土砂が堆積し餌のカワニナが減少、幼虫の生息の場が狭められた。
 
 人間の生活を豊かにする河川工事も、自然環境の保全と両立させながら進めるべきではないかと思う。

2014.05.08 中国新聞「広場」掲載)

 

 

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2014年6月23日 (月)

ミツバチの聴聞

    岩国市   会 員    片山 清勝

 地元の寺で5月下旬にあった「親鸞聖人降誕会」。本堂でのお勤めの後、聖人の話を聞いていた。すると、後ろのほうから羽音がした。私の横を通り過ぎて、前の席へと飛んで行った。
 それは1匹のミツバチ。どうして本堂へ入り込んだのかと思っていると、女性がすぐ、「話を聞きに来たんじゃけえ殺生しちゃあいけんよ」と、聴聞の人たちに静かに優しく呼び掛けていた。降誕会の会場にふさわしい声掛けで、心根の優しい方だろうと思った。羽音が近づくと、本堂にいる誰もが優しい手つきで払っていた。
 ミツバチは作物の受粉、蜂蜜の生産と、人間の生活とも深い関わりがある。最近、その減少が著しいという。自然環境の変化で大きな問題になっている。このミツバチもどうしたものかと困り果て、お寺を頼って来たのではないかとも思えた。
 講師は、近年、過疎や高齢化の影響もあって寺へのお参りが減っていると話していた。寂しいことだ。私にとって、お寺は身近で、生きていくヒントを教わることができ、心も安らぐ場所。ミツバチの聴聞をいいヒントに、ふらりと訪ねて見る人が増えれば、お寺が再び活気づくのではないか。

    (2014.06.23  中国新聞「明窓」掲載)
 

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2014年6月21日 (土)

紫陽花に埋まる母

   岩国市  会 員   山本 一 

 
病院で寝たきりの母は花が好きだった。5月末からは庭に次々と紫陽花が咲く。まず白の大輪、続いて赤。可憐で質素な山紫陽花2種も早咲きだ。6月上旬からはどこにでもある赤紫の大輪と額が加わり、全てが咲き乱れる。母に、この時期だけは贅沢に、毎日新しい紫陽花を持参した。とりわけ赤と白の組み合わせが好きだった。病院の看護師さんや介護士さんの「わー、きれい」の声に母もかすかな笑顔をみせた。
 
 今年もいよいよ全ての紫陽花が咲きそろう。6月8日は母の一周忌だった。お墓を6種類の紫陽花で埋めてあげた。
  (2014.06.21 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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2014年6月19日 (木)

「幸せが来る来る」

     岩国市 会 員   貝 良枝

 雨上がりの朝、久しぶりに散歩に出掛ける。道端のクローバーの一群に足を止めた。
 
 「四つ葉を探す時は『幸せ探そう』と言ってから探すのよ。そうしたら本当に結婚が決まり……」と同僚が話したことが気になっていた。
 
 「幸せさーがし」と歌うように言い見ていると、緑の一群の中に四つ葉が一本浮かび上がる。そっと摘んでまじまじと見る。
 
 先々月、天に夫を見送った私の幸せって何だろう。気になっている年ごろの娘の縁談のことかしら。帰り道、また見ると目が釘付けになる。四つ葉だ。
 
 「えーっ、下の娘にも縁談?」

 (2014.06.15 毎日新聞「はがき随筆」掲載;文学賞)

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2014年6月17日 (火)

ばあばのおっぱい

   山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 広島に住む長女が里帰り出産をし、孫が生まれてはや2カ月。時々、娘に代わっておむつを替えたりミルクを飲ませたりする。今では母乳パックで冷凍した母乳を哺乳瓶で飲ませることができるので、孫は不思議そうに私の顔を見つめる。
 
 眠くなると胸をさわってくるが、私のおっぱいではどうしようもない。そこでひらめいた。おしゃぶりを胸に置いて吸わせてみよう。「ばあばのおっぱい飲んで、ねんねしようね」と言いながら、だっこすると、一生懸命吸いながら眠りにつく。我が家では、おしゃぶりは、ばあばのおっぱいと呼ばれている。
 
  (2014.06.17 毎日新聞「はがき随筆」掲載) 

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2014年6月13日 (金)

元気くれる通学児童

    岩国市   会 員   片山 清勝 

 「来た、来た」と登校中の小学1年生が、狭い通りの傍らによけて並ぶ。待つほどもなく、近くの幼稚園の送迎バスが来る。
 通り過ぎるとき、車内の先生の名前を呼び一斉に手を振る。卒園生の思わぬ声掛けに、先生は笑顔で手を振り応える。
 入学時は、黄色のカバーを掛けたランドセルが、少し大きいと思っていた。
 それから2カ月余り、大きめのかばんも体になじみ、登下校の様子も安心して見れるようになった。成長したなと感じる。
 毎朝、元気な会話を交わし、時には立ち止まって、身ぶり手ぶりで話し合う姿が微笑ましい。
 高齢夫婦のわが家。子どもの声が家の中から消えて久しい。しかし、近くに若い人らの新築が増え、児童数も増している。
 おかげさまで、朝夕の子どものはつらつとした声に、夫婦で、元気をもらっている。いつまでも子どもの明るい声が続くように、と願いながら見送っている。

   (2014.06.13 中国新聞「広場」掲載) 

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2014年6月12日 (木)

ともに闘って

        岩国市  会 員   横山 恵子

 
結婚3年目ぐらいだった。厳しい姑のことを思ってか、夫が「お前は結婚したことを後侮しとると思うが、わしは結婚して良かった……」と言った。その言葉を支えに40年余り。
 
 それは突然にやって来た。4月28日夕方、夫が救急車で運ばれたと聞き、急ぎ病院へ。夜中3時過ぎ、看護師の動きが慌ただしくなった。夫の寝息が少しずつ静かになっていく。頭をなでながら「お父さん、ありがとう、ありがとうね」と耳元で言うと、看護師が背中をさすってくれた。長い闘病から解放された穏やかな顔。誕生日を祝ったばかり。73年の生涯だった

  (2014.06.12
 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2014年6月 6日 (金)

返上はいつできる?

    岩国市  会 員   森重 和枝

 
今年も、里芋の芽が出始める。雑草がびっしり生える。芽をきずつけないように気をつけて草取りをする。毎年、精出して作るが、収穫量にがっかりする。不得手だ。 
 
姑から交代して10年になる。姑のは掘るのに一苦労するほどの大きな塊だった。私の場合はスコツプ1回で掘れる。
 
 先日、施設にいる姑が「もう畑もできんようになった。どうなっとるかいねー、、あんたは町の子じゃけー、ようやらんじゃろうが」。「何とかやってるよ」とは言ったが、とても姑のようには無理。
 
 立派な里芋を作れるようになったら、町の子返上できるかも。
 
   (2014.06.06 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2014年6月 3日 (火)

ホタルの競演

   岩国市  会 員   角 智之 


 初夏の風に乗ってホタルがやって来る。実家は錦川の中流域で川のそばの道路を挟んですぐの所に家があった。我が家は居ながらにしてホタルの競演が見える特等席だった。梅雨入り前後の雨天の夕方から、川面に霧が立ち込めると、光はおぼろとなり神秘的な雰囲気を醸す。仲間とコミュニケーションを取っているのか、縄張りを誇示しているのか、わずか数日のはかない命を惜しむかのようだ。

 
 古くから親しまれてきた風情ある情景も見えなくなって久しい。人間の生活を優先させた結果であろう。乱舞の復活を夢見て保護に努めなければと思う。
 

  (2014.06.02 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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