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2014年7月

2014年7月31日 (木)

高らかに鳴け

        岩国市  会 員  安西 詩代

 

朝、玄関を開けると床で私を出迎える形で待っていた。頭を上げ、前脚をしっかり伸ばし、シャキッとした姿勢で背中に一筋の割れ目のある抜け殼。
 まだ梅雨の明けていない昨夜はどしゃ降りだった。玄関の軒下で羽化した蝉は、この雨の中、どこでしのいでいるのだろう。
 抜け殼を棚に置いて眺めた。小さいながら威厳のある姿に驚いた。「抜け殼のような」という表現は負の時に使われるが、「抜け殼でさえ威厳のある」と使う方が良い。長い間、土の中で身を潜め、地上に出るのを待った。たった数日の命で自分の使命を果たす、潔い蝉よ!
  (2014.07.31 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2014年7月28日 (月)

婦唱夫随?

 
  岩国市  会 員   沖 義照

 「最近、よく眠れるようになったわ」。

朝食をとりながら奥さんが言う。そういえばここ半年、隣のベッドで何度も寝がえりを打っていたような気がする。そんな奥さんが、最近よく眠れるようになった訳は、はなはだ単純なことであった。

 もともと、ちょっと油断をすると肥えてしまう体質らしい。何とか人並みにスリムになりたいため、好きなものを腹いっぱい食べることを我慢する。やがて少しスリムになるが、成功した途端、また好きなものを好きなだけ食べる。すると元の木阿弥に……の繰り返しが、ずっと続いていた。

 ここ半年は食事を工夫しダイエットに頑張っている期間だったらしい。先日、目標の体重まで減量したので、最近はおいしいものを十分に食べるようにしたという。腹は正直なものである。一晩中ぐっすりと眠れるようになったそうだ。

実は数ヶ月前から私の体重が少しずつ落ちていた。どこかおかしいのかなと少し気にはなっていたが、先日、顔を洗っている時に頬の膨らみを感じた。

「おっ、体重が戻ってきたぞ」

そう思いながら朝の食卓についていたとき、この話が飛び出したのである。

何ていうことはない、ダイエットの必要のない私が、奥さんのダイエットにつきあわされてスリムになっていただけである。

奥さんと私、夫唱婦随ならぬ婦唱夫随。同じように体重が増減している。
2017.07.28 毎日新聞「男の気持ち」掲載)

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2014年7月25日 (金)

いけ花の看板

    岩国市  会 員   安西 詩代

 

「おばちゃん、いけ花って何?」と、近所に住む仲良しの小学3年生の彼に聞かれた。先日玄関先に「いけ花教室」の看板を出したからだ。先輩は「看板を見て入会する方はいないよ」と言った。 
 小学生の時から習い始めたいけ花。子育ての時も親の介護の時も、暇をみては教室に通った。子育てのイライラもお花で紛れていたのかもしれない。
 今の私の師は93歳で現役の教授者。高齢になり足や耳が不自由になられたが、送迎の手助けが必要なだけで、指導の感覚は新しい。いけ花の流行にも敏感な方だ。師からは、いけ花だけでなく、人生の歩み方や母から聞き忘れた礼儀作法を教えてもらい、生き方のお手本としている。
 私が若い頃は、習い事というと華道、茶道が定番だったが、現在は多様化しているようだ。今までは自分の趣味として楽しんできたが、一人でも多くの人にいけ花の素晴らしさや伝統を継ぎたいと思い、恥ずかしい気持ちはあったけれど看板を褐けた。
 小3の彼に「この看板どう思う?」と聞くと、「いいんじゃない!」と答えて くれた。ちょっぴり勇気が湧いた。
   
2014.07.25 朝日新聞「声」掲載)

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2014年7月18日 (金)

20歳、そのとき

    岩国市  会 員   吉岡 賢一 

 青年団や自治会が中心になって開催される「慰霊盆踊り」は、地区をあげての夏の夜の風物詩であり、老若男女の楽しみでもあった。 

おそろいの派手な浴衣の三十数人が、やぐら囲んで音頭に合わせ、身ぶり手ぶりも華やかに汗を飛ばして舞い踊る。声が掛かればよその地区にも応援に出かけた。
 浴衣姿のうら若き女性を自転車の荷台に乗せ、颯爽と風を切って盆踊り会場をはしごする。そうして青年団同士や他地区との交流を深め切磋琢磨した。

 
中には個人的な交流を深め、幾つかのカップルも出来上がった。遠い昔の「あせ物語」。 

  (2014.07.18 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

 

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2014年7月 8日 (火)

「太陽光」技術向上を

     岩国市   会 員    山本 一

 電力は不可欠なものだが、今の電力生産は地球を壊すという一面がある。火力発電は地球温暖化をもたらし、原子力発電は制御に不安が残る。 
 今こそ世界が、原発の即時廃止と火電の縮小、自然エネルギーの活用という方向でまとまることが必要である。 
 世界が一丸となり、自然エネルギー活用に知恵を絞る時だと思う。中でも、全ての国のテーマになり得て可能性の大きいのは、太陽光発電ではないだろうか。
 課題の第一は、発電パネルの高効率化だ。第二は蓄電技術の向上。第三に電力の世界相互融通の技術である。送電技術が改良されれは、世界で電力融通が可能になる。環境破壊縮小につながる。 
 「時間をかけて研究すれば、原子力は制御できる」という意見があるが、同じ時間をかけてやるなら自然エネルギーであり、とりわけ、太陽光エネルギーに英知を傾けるべきだと思う。政府は太陽光発電の技術革新に取り組んでほしい。

     (2014.07.08 中国新聞「広場」掲載)

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2014年7月 6日 (日)

どこにも居る顔

         岩国市  会 員   金森 靖子

 
園芸店で胡瓜の苗を選んでいる時、「こんにちは」と知らない女性に声を掛けられた。ニコニコと笑っている。私も笑顔で軽く頭を下げたが、誰だか思い出せない。しばらく顔を見つめ合っていたが「ごめんなさい。知っている方と間違えました」と、深く頭を下げ帰って行かれた。ふと笑いが込み上げる。
 今まで何人の人に間違って声を掛けられたことだろう。よく行く郵便局では、ガラス越しに話しかけるような笑顔をしてくれる男性局員さんがいた。また、病院の待合室で。信号を待つ間の向こう側で。挟いこの街に、私は何人も居るようだ。
 (2014.07.06 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2014年7月 3日 (木)

ごちそう畑

   岩国市  会 員   山下 治子

 やはり降り出した。洗履物を取り込んでいると「おお、よしよし」と夫が帰って来た。新聞紙に包んだ泥付き大根を抱え「立派に育った僕の可愛い子供たちです」とうれしげに収種物を渡された。夕飯は大根葉のドライカレーと大根サラダに決まりだ。 
 

夫の畑作は2年目。昨年散々だった玉ねぎが、今年は見事な出来ばえだ。愛おしいといってらっきょうのようなチビ玉まで持ち帰る。キャベツを初めて作ったら「蝶々が大嫌いになった」とはぶてるが、我が家は夫産野菜をご近所にもまわし、青虫のごとくに食べている。そのうち、ひーらひらと飛びそうだ。 

  (2014.07.03 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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