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2015年3月

2015年3月25日 (水)

年寄りの冷や水

 岩国市  会 員   沖 洋子

 この歳になって、昔習ったことのあるエアロビクスを始めた。若い人たちに交じってのレッスンは思った以上にハードだ。リズムに合わせてステップを踏むだけなのに、難しい動きになると体がついていかない。動作がワンテンポ遅れてしまう。  
 30分のレッスンが終わると、出口でインストラクターが「最後までやったね!」と声がけをしてくれる。下手を恥ずかしいと思う気持ちが吹っ飛ぶ。帰りにはよれよれになりながらもケガだけはしないようにして続けたいと思う。体を動かすことが出来る楽しさをもっともっと味わいたいからだ。  
   (2015.03.25 毎日新聞「はがき随筆」掲載)
 

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2015年3月23日 (月)

定年は折り返し 納得

    岩国市   会 員   山本 一

 在職中に交流のあった関西の知人が、「一緒に飲みたい」と岩国にやってきた。
 彼の話は衝撃的たった。65歳で退職後、料理学校に入学し、1年後のこの3月に卒業。これから小料理屋を始める予定で、90歳までやるとするとまだ20年はやれるという。寮に入ったので、既に約400万円を先行投資したそうだ。
 私は61歳で退職した。その時「人生の大半は終わっ た。これからの第二の人生をどうしようか」と考えた。いうなれば、「付録の人生」として意識した。
 しかし、よく考えてみると、今は人生100年の時代だとあの日野原重明先生も暗示している。私の場合、在職は42年で退職後は約40年もある。どうみても付録の人生は聞違いだ。定年は人生の折り返し点なのだ。
 とはいえ、身体機能は明らかに下降線をたどっている。体と折り合いをつけながら、余生ではなく「後半の人生」を生きよう。
 知人に刺激され、趣味ざんまいの日々が心の中で、より重要さを増した気がする。

   (2015.03.23 中国新聞「広場」掲載 )

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蠢 動

 
    岩国市  会 員   吉岡賢一


 春に虫二つ書いて「うごめく」という。まさに今、眠りから覚めた虫たちがもぞもぞと動き始める季節。寒さに縮こまっていた足腰に気合心入れ、虫たちに負けじと畑で鍬を振る。
 冬枯れて白っぽくなっていた土が肥やしを入れると黒味を帯びて力強さをよみがえらせる。額にうっすらにじむ汗。この汗がやがて、トマトやキュウリ、スイカをかぶりつく孫たちの歓声に変わる日が。「やはり家の畑でとれたのが一番おいしい」と山の神のお墨付きも。
 ただ、ひと鍬ごとにいもむしゴーロゴロ。気の毒だ。無理やり起こしてごめん。
 

  (2015.03.23 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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2015年3月18日 (水)

自分を見張る

        岩国市  会 員   山本 一

 

風呂に入ろうと服を脱ぎ、浴槽の蓋を開けてビックリ。湯がない。栓をし忘れたのだ。約200㍑のお湯が無駄になった。妻の「また」というあざけり顔が目に浮かび、寒いが引き返せない。やむを得ずシャワーだけで我慢する。私は元々こんなヘマを以前からよくやる。
 「それにしても、何だか最近は多いぞ……」と、気になる。先日は入浴剤と間違えて、隣にある洗濯洗剤を入れた。根っからのうっかり者に老化が輪をかけ始めたらしい。

妻の目はごまかした。が、現実を素直に受け止め、自分で自分を厳しく監視しようと思う。

  (2015.03.18 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2015年3月17日 (火)

助太刀いたす

        岩国市  会 員   安西 詩代

 

 道の真ん中で2羽のカラスがピョンピョン跳ねている。近づくと箸のように細い30センチぐらいのヘビを両面から囲んで威嚇している。 
 おなかに深手をおっているヘビだが、鎌首をもたげて果敢に立ち向かっている姿がいじらしい。「シッ!」とカラスを追い払い木の枝を差し出すと「ワラをも掴む」の例えどおり、
一瞬でクルクルと巻きついて「助けてー」と叫んだように思えた。カラスに見つからないような丈の高い草むらに枝ごと置いた。彼らは電線から「力―力―と大きな声で文句を言った。
 「義を見てせざるは勇無きなり」

   (2015.03.17 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

 

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2015年3月 9日 (月)

縄跳びで絆育む児童

 岩国市   会 員   片山 清勝

 
 小学校の運動場から元気な声が聞こえる。低学年らしい児童が縄跳びをしている。
 前跳びが何回もできる子に交じって、1回の子も2回の子もいる。後ろ跳びや、シャンプ1回で複数回縄を回す子。どの子も一生懸命に見える。
 縄跳びは、回っている縄が地面に着く時にシャンプして縄を通過させる。ジャンプするタイミングで、跳べたり跳べなかったりするから面白い。どこでもできる手軽な運動であり遊びでもある。
 縄跳びをしたことがないという人は恐らく少ないだろう。2重跳びは難しく、交差跳びは神業に見えた記憶がある。
 長い縄の両端を回して何人かが連れ立って跳ぶ。全員の息が合えば続く。先日は声を掛け合って40回、50回と続いていた。運動場でのこうした育みが、和みや絆になっていくのだろう。
 春めいた日差しの下での縄跳び。汗をかいて風邪をひくな。そんなことを思いながら、子どもの頃を思い出していた。

   (2015.03.09 中国新聞「広場」掲載)

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2015年3月 7日 (土)

思い出の整理

   岩国市  会 員   上田 孝

 

引っ越しの後片付けが一段落し、机の引き出しを整理していたところ、マッチが十数個出てきた。 
 
 飲み屋のものに交じって学生時代に行った喫茶店のものもある。若いママさん目当てにモーニングサービスに通った店。友達の車で仲間と行った洒落た郊外の店。何かを求めて繁華街に出るもののそこでコーヒーを飲むだけで帰った店。薄暗いジャズ喫茶でわかったような顔をしてたばこをふかしていた風景などは今思い起こせば気恥ずかしい。
 
 捨てるものを選びながらしばし感傷に浸った。結局喫茶店のマッチは全部引き出しに戻した。

 (2015.03.07 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2015年3月 6日 (金)

ダブルの悲しみ

    岩国市  会 員   林 治子

 

早朝、東京からの電話。今父が亡くなりましたと姪の沈んだ声。あー、やっぱりだめだったか。13年近く家族同然に暮らしてきた。あの日外出から帰って目にしたのは意識がない弟。病院へ。担当医から脳幹から出血している、助からない、一刻も早く親族の方に連絡するように、と。急に言われ頭の中は真っ白。その時の記憶がない。
 
 転院を含め10力月、せめて口がきけるようにとの願いもかなわずそのまま逝ってしまった。一緒の布団で寝るほど可愛がっていた犬も突然後を追うように死んでしまった。重なる悲しみに私の足は母の眠る寺に向かっていた。

    (2015.03.06 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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