« 2015年8月 | トップページ | 2015年10月 »

2015年9月

2015年9月30日 (水)

新築の音

    岩国市  会 員   片山 清勝

 向かいの新築現場、棟上げが終わると重機の音が消え静かになる。すると、シャッシャと鋸で木を切る音、シュルシュルと鉋屑が舞い出る音、金槌で打つ音など、日本家屋造り独特の懐かしい仕事の音に変わる。
 どの音も軽快で単調だが力強く聞こえる。それは、施主の夢を作り上げていく大事な任務を背負っているからだろう。
 パタ、パタという音、畳職人が、敷いた畳をたたいている。連日させてもらった仕事見学もイ草の香りをかいで終わり。
 多くの職人が手がけ完成した家の住人は3世代家族という。元気な子供の声が楽しみだ。      
   
(2015.09.30 毎日新聞「はがき随筆」掲載) 

| | コメント (0)

2015年9月27日 (日)

孫と交流 新聞15年目

    岩国市   会 員   片山清勝

 この秋、「孫新聞」を作り始めてから15年目、ブログを開設してから10年目という節目を迎えた。いずれも定年後に始めたが、ここまで続いたのは健康で過ごせたからと、そのことにまず感謝している。 
 孫の3歳の誕生日前、嫁から「ひらがなが読めるようになりました」とメールが届いた。離れて住む孫とのコミュニケーションにと、小さな新聞を作り始めた。
 今、孫は高校2年。その成長には追い付けなくなった。それでも毎月、老夫婦の様子を写真と文で送り続け、170号を超えた。
 一方のブログは、エッセー同好会で勧められた。始めてみると、何の制限もなく、書く習慣付けにはいい方法だと気付いた。
 1年分のブログを印刷して製本している。先日、9冊目を仕上げた。各冊500ページ前後で、並べると、それなりの重さを感じる。
 孫新聞もブログ冊子も、たまに読み返すと妙に懐かしい。どちらもパソコンがあればこその作業だが、キーギボードを打てる間は楽しみながら続けたい。

    (2015.09.27 中国新聞「広場」掲載)
        

| | コメント (0)

2015年9月15日 (火)

感謝のみ

       岩国市  会 員   横山 恵子

 今年2月ごろから車椅子を使用するようになった89歳の母。左の大腿骨を骨折した。
 手術しなければ骨がつくのに約2ヵ月かかる上に寝たきりになるという。
 弟が「2ヵ月もかかるのは可哀そうだから、手術してもらった方が良いよ」。  
 妹と弟と3人で医師から手術のリスクなどについて話を聞いた。
 痛みから解放されベッドから車椅子に乗り降りできればとお願いした。
 手術2日後、車椅子に座る笑顔の母がいた。想定外の出来事だったが、現代医学と献身的な看護には頭が下がる。

    (2015.09.15毎日新聞「はがき随筆」掲載)

| | コメント (0)

秋の宝石きらきら

     山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 

思いがけない人から小包が届いた。開けてみると「わが家で少しばかり栽培しているブドウです」の手紙を添えて「藤稔」という品種の秋の宝石が箱の中でキラキラ輝いている。こんなに大きなブドウは見たことがなかったので「丹精込めて育てると、こんなに大きくなるんですね」と言うと、そういう品種だと教えてくれた。それにしても自宅でこんなブドウができるなんて感動。一粒口の中へ入れると、柔らかくジューシーで甘くておいしい。おまけに種がないので食べやすい。食べ始めたら、やめられない止まらない状態になってしまった。ごちそうさま。

   (2015.09.15毎日新聞「はがき随筆」掲載)

| | コメント (0)

セ ミ

    岩国市   会 員   片山清勝

 台風一過の朝、少しひんやりとした。爽やかな空気を思いきり吸い込もうとした。その時、降ってきたように、どこかから落ちてきたものがあった。
 それは何かと見れば、1匹のセミだった。よく見ると羽の先端はちぎれ、既に果てている。風に乗ってきたのか、鳥が運んでいる途中で落としたのか、上空を見回すが分からない。何かの縁で、わが家の狭い庭へ落ちたのだろう。
 セミは、身近にいて害もなく、誰もが親しめる昆虫で、思い出も多いと思う。地表に出てからは1週間の寿命と子どもの頃に聞いたのを今も覚えている。「観察したら放してやれ」。そんな心優しい人もたくさんいた。しかし、夏休み作品の一つに昆虫標本は欠かせない。セミは種類が多く、子供でも容易に捕れる貴重な標本対象なので、じっと木を見上げたものだ。
 最近のセミの研究では、地表に出て1ヵ月近く生きるものや、大型のセミほど長生きするというリポートがある。地下で過ごす7年近い期間を加えると、昆虫類の中では長寿というが、実感はない。鳴き始めてから1週間の寿命という説の方が命の大切さをより強く感じさせる。
 そのセミを手のひらにのせて見る。羽は先端がぎざぎざにちぎれていて、これでは飛べない。これは、ひと夏を満喫するまで飛んだ証しだと思う。
  「7年先、もう一度生まれ変わって出てこい」 
 
そう言いながら、庭木の根元に埋めた。

   (2015.09.15 中国新聞セレクト「ひといき」掲載)
 

| | コメント (0)

2015年9月 8日 (火)

居場所

    岩国市  会 員   樽本 久美

 父が、あんなに行きたがらなかったデイサービスに行くことになった。父と母と私で見学に行ってみた。1年前にできたので建物もきれいで明るく、男性が多くリハビリに励んでいた。足の悪い母がお世話になっているデイサービスは、女性が多く男性は少ない。 
 ここは、食事がないが、男性が多い。これからは、2冊のデイサービスノートを書くのが私の仕事。子供のいない私には、どんなやり取りノートになるか楽しみである。もしかしたら、父がまたアコーディオンを弾けるかもしれない。もうすぐ84歳。運転免許証を返した父の新しい居場所。

  (2015.09.08 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

   

| | コメント (0)

« 2015年8月 | トップページ | 2015年10月 »