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2016年5月

2016年5月31日 (火)

アジサイ 母の墓前に

   岩国市   会 員   山本 一

 わが家の白いアジサイが、間もなく満開になりそうだ。これから6月中旬まで、6種類のアジサイが庭に咲く。
 アジサイが咲き始めると、決まって母を思い出す。病院に寝たきりで、この時季になると、毎日のように種類を替えて生け替えた。
 3年前の6月9日の明け方、前日に私が持って行ったアジサイに見守られ、母は逝った。
 葬儀は、廃屋になった実家のある島根県吉賀町で行った。この時もアジサイを運んだ。以後、毎年命日には、墓をわが家のアジサイで埋め尽くす。
 今年も間もなく、命日が来る。その頃には全てのアジサイが咲きそろう。白に続いて小柄なヤマアジサイ、追い掛けるように赤、ピンク、青系のガクアジサイと続く。
 既に実家は人の手に渡り、古里は疎遠になった。庭のアジサイに「間もなく命日、墓参りをしなさい」と言われている気がする。今年も、墓をアジサイで埋め尽くそう。 

    (2016.05.31 中国新聞「広場」掲載)

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2016年5月23日 (月)

ピアノの嫁入り

    山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 当時、山□県に4台しかなく安い買い物ではなかったが、40年経過し無用の長物となってしまったグランドピアノ。そのピアノの嫁入りの仲人をした。
 まず、お見合いをセッティング。先方の要望は「とにかく音を聞かせて」。300㌔を超す置き場所となる床の強度はすでに補強済みという。見合いの当日、ピアノを弾いた娘さんが音を気に入り、とんとん拍子に話が進み、2週間後に嫁入りというスピード婚となった。
 誰にも弾かれず放置されてしまうのであれば、この新しい出会いで、また明るい音色を響かせてほしいと願っている。   
    (2016.05.23 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2016年5月22日 (日)

ミツマタの花

   岩国市   会 員   片山清勝

 岩国のある公園の国重要文化財の庭にミツマタの花が咲いていた。写真を撮っていると、年配の夫婦連れに「撮ってくれませんか」と頼まれた。観光岩国のため、気持ちよく応えた。 
  「ミツマタの花も一緒に」という希望だった。蜂の巣のような形の黄色い花を背景にして数回シャッターを押す。カメラを戻して普通なら 「お気をつけて」でお別れになる。ところが懐かしそうに花を見ながら「何十年ぶりかの出合いです」と話し始められた。
 両親は、錦帯橋の架かる錦川の上流でミツマタを栽培して切り出し、蒸して樹皮を剥ぎ、それを出荷していたという。樹皮は和紙や紙幣用の紙の原料になる。「心を込めて仕事をしていたが、私か中学生の頃には時代の波に押され、関西での再出発を余儀なくされました」
 年を重ねたので、もう一度、両親の故郷を見ておこう、と訪ねたところ、「思いがけず、この花に出合えて故郷に歓迎してもらったようです」と話された。そこには訪ねてよかったというほかに、両親への深い慈しみを感じた。
 資料によれば、ミツマタは、岩国藩では作付けを奨励して面積が増えた。製紙技術も向上して盛況となった。半紙の生産は藩の主要産業となり財政を潤し、藩は紙専売制度を制定して取引拡大を図った。
 歴史あるミツマタの栽培を断念され心残りであった両親。その思いが、花の咲く時季に息子夫婦を故郷にいざなったのだろう。

    (2016.05.22 中国新聞セレクト「ひといき」掲載)

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2016年5月17日 (火)

ウオークで題材探しも

    岩国市   会 員   片山清勝

 現役時代、30代半ばまでの3交替勤務を含む不規則な生活で、健康策といえば一にも二にも睡眠を心掛けていた。定年退職から15年半、時間に余裕があり、規則正しい生活となり、健康への気配りが変わった。
 今、健やかに過ごすために大切なことは、三度の食事を好き嫌いなく、おいしく食べることだ。その食事は、病身だった母を元気にさせた妻の味付けに、安心して一任。何でもおいしく食べているが、食べ過ぎないように注意はしている。
 そんな食事のために、80歳で自前の歯20本を目標にして、歯の保全検診を続けている。診察台で「おお、いいですね」という歯科医の声にほっとする。
 運動は1回1時間のウォーキングを週に2、3回、毎回コースを変えて歩く。途中でいろんな人との会話が楽しめる。また、花や野鳥との出合いから自然の移ろいを肌で感じる。これは体にいいだけでなく、気持ちを内から整える刺激になる。趣味のエッセー創作の題材にも出合える。
 10年前、家庭医から検便の定期検査を勧められた。大腸がんが早期発見され、手術して5年の観察期間が今萩、終わる。病の早期発見と検査の重要な関連を再認識。今は医師の判断で必要な検査を受けている。
 脳トレには、新聞にしつかり目を通す。起床してすぐにうがいをして、口中の雑菌を除く。エッセーや陶芸、菜園仲間などとの交流を楽しむ。健康法は、ちょつとした気遣いの継続だと信じ、実践している。

    (2016.05.17 中国新聞セレクト「健やかライフ」掲載)

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2016年5月 9日 (月)

園児のひと言

          岩国市  会 員   片山 清勝  

 母親と手をつなぎ、会話しながら登園するまっさらな制服が初々しい女の子。初対面だが、挨拶を交わす。すれ違う時「ママ、あのおじさん知ってるの」と声が聞こえた。入園間もない子ども心の不安を知った。振り返ると、子どもの顔を見ながら母親は何か話している。
 知らない人に声をかけられた時の対応を園児や児童らは教えられている。その指導に安心するが、健全な社会であるための何かが欠けているとも感じる。
 挨拶は交流の始まり。せめて怖いと思われない顔にしようと鏡の前に立つ。口を開きはっきりと発音し笑顔を作ってみる。
   (2016.05.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2016年5月 3日 (火)

シグナル黄点滅

岩国市  会 員   森重 和枝

 

今日も買い物から帰り、片付けようと戸棚を開け「あっ!」。補完したつもりのマヨネーズがある。カレールーも2箱目。

スーパーの特売日には、まとめ買いをするが、この頃は買い置きする商品の重なることが多くなった。同一じ物が並ぶ度に、またやったと落ち込む。 

以前、友人が実家の冷蔵庫を開けると卵パックが何個も並んでいたので驚いて病院へ連れて行ったら認知症だったと悔やんでいたのを思い出す。後期高齢者入りも間近になり脳の方も壊れ始めたのか? まだ、間に合う。年のせいにせず、脳トレに励むとしよう。

 (2016.05.03 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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2016年5月 2日 (月)

また会いましょう

     岩国市  会 員   安西 詩代

 

「今まで世話になったの~。お陰で楽しかった。ありがとう」。91歳の方が言われる。「あら永遠の別れの言葉みたいですね」。もう来週はこの世にいないかもしれないからとのこと。
 昨年に体の調子を崩し、今までのように畑仕事や草刈りが思うようにいかない。すぐに疲れて動けない。どこかが悪くて体が動かないのなら納得できる。検査してもどこも悪くないのが腹立たしい。「早う死にたい」と言われる。「私もそのうち行きますから良い席を取っておいてくださいね」「そうじゃの~特別席を取っとくよ」と笑って新緑の中の彼に手を振った。

 (2016.05.02 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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手押しポンプ活用を

    岩国市  会 員   片山清勝

 大きな災害が発生すると、大勢の人が避難生活を余儀なくされる。避難直後の必要な物としては水の要望が強い。いずれは救援物資として届くけれど、食料とは違った緊急性を要する。
 水道が普及する前は、井戸や手押しポンプなど地下水を生活用水に使っていた。都市化が進むにつれ、こうした方式は地方でも見掛けなくなっている。
 しかし、その手軽さはよく知られていると思う。そこで、避難所に指定される公共施設などに、手押しポンプを設置してはどうだろうか。
 以前使われた井戸やポンプの所在を探れば、水脈は見つかるのではなかろうか。
 ただ、設置すれば水質管理という新たな業務が必要になるが、万が一の場合の人命には代えられない。
 飲料に適さなくても、トイレ用水や清掃に使用すれば、避難所の衛生面の確保に役立つ。
 手押しポンプは、誰でも訓練なしで扱え、避難所での一助になると思う。

     (2016.05.02 中国新聞「広場」掲載)
        

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