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2016年8月15日 (月)

命日の墓掃除

      岩国市   会 員   片山清勝

 私は両親と祖父母の命日前に墓掃除を欠かさない。墓参りも年に十数回は行く。ことしは祖母の命日の前に都合がつかず、当日の朝早く出掛けた。「おばあさん来たで」。墓に向かって語りかけて掃除を始めた。蒸し暑い日で、すぐに額から大粒の汗が流れ出て目に入る。拭っていると、あの日に大汗をかいたことを思い出した。
 それは60年以上前のこと。小学6年だった時、病気で伏せていた祖母の容体が急変した。私は、仕事から帰っていた父の言い付けで、出先にいた母に連絡するため出掛けた。ようやく乗れるようになった父の自転車をこいで急いだ。
 私から祖母の様子を聞いた母は出先の車で家まで送ってもらったが、私は来た道を再び自転車で帰った。家に着くと、「雨に降られたか」と言われるほど、汗で全身はびっしょり。往復とも夢中で自転車をこいたためだ。その晩、私は初めて、人の臨終に直面した。
 祖母のことしの命日に掃除を終えた時、黄色いチョウが墓の上を飛んだ。祖母が「ありがとう、安心した」と伝えによこしたのだろう。家を継いで半世紀。父の享年を20年超えた。先祖の墓守は、私ら夫婦の当たり前の日常になった。

     (2016.08.15  中国新聞「洗心」掲載)

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