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2017年10月 9日 (月)

孝と不孝と

 岩国市  会 員   吉岡 賢一

  その朝は、ちゃぶ台に卵が1個置かれていた。「これを飲んで滋養を付けて徒競走を頑張って」という家族の願いが込められた生卵である。台所では仕事を休んだ母が、運動会の弁当を手際よくこしらえている。
 「ヨーシ、今年こそはいいとこ見せよう」と気張ってはみるが、生来の鈍足。生卵のかいもなく孝行できないままに終わった。
 夢に描いた都会生活も俊足の兄に先を越された。夢を封印し同居を選んだ。父も母もこの手でお浄土へ送り届けお墓も仏壇も守っている。少しの孝と遠い昔の不幸が思い出される秋半ば。金木犀の香りが心潤す。
   (2017.10.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

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